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■X 「一体改革」と介護保険改革編

X−1 政府が進めようとしている「社会保障・税一体改革」とはどのようなものですか

イラスト 消費税増税と社会保障制度全分野にわたる改悪を一体的に進めるものです。
 消費税については、社会保障を支えるための財源の確保のために、段階的(2014年4月に8%、2015年10月に10%)にあげることがうちだされています。(2012年6月26日衆議院強行採決で通過、2012年7月現在、参議院で審議中。)
 政府は、第1に、今までの年金・医療・介護だけでは、社会保障として国民の中に公平感がないとし、「子ども・子育て新システム」の子育て支援も加えました。給付・負担の両面で国民全員が当事者であれば、広く全国民から徴収できる消費税を主要な財源とするのは、増税をするにも国民の納得が得やすいと述べています。
 第2に、日本は2015年に団塊の世代が一斉に老齢期に入り、高齢者を支えるための制度と財政が必要になると言われています。しかし、いま、少子化や長引く不況により非正規雇用が増えて社会保障を支える社会経済情勢も変化し、税収は少なくなっています。今後は、3人で高齢者1人を支える「騎馬戦」型から、1人が1人を支える「肩車」型の社会になるため、備えが必要とも言われています。 
 これらの政府の言い分は国民に「消費税増税はしかたがない」と思わせるものですが、責任を持って社会保障を支えるという国の役割(公助)は脇に置いて、自助・互助ばかりを強調しているのが実態です。今でさえ生活保護費受給者に「嫉妬してしまう」ほど低賃金の国民に10%の消費税増税は大きな負担です。企業経営者からも、先行き不安のための買い控えが続いているいま、「何もこの時期に!」との批判の声がたくさん出ています。病院や事業所経営も消費税がアップすることで大きな負担がかかり、私たちの賃金にも影響が出てくることが予想されます。ジャーナリストの斎藤貴男氏も「増税すれば、失業率は2桁。税金控除の関係から、雇用も正規から非正規への転換がいっそう進む」とその著書に書いています。そもそも国民の生活を支える社会保障の財源に、いっそうの困難を国民におしつけ、貧困を加速させる消費税をあてることそのものが本末転倒と言わざるをえません。また、政府は今後は「肩車」型社会になると説明していますが、実際は、現役世代は高齢者だけでなく、子どもも同時に支えています。少子化も含めて考えると、現在も2025年も2人で1人を支える状態に変わりはないのが実態です。
グラフ そもそも、この「社会保障・税一体改革」は2003年の小泉構造改革から続いている流れです。財界からの要求で、消費税が5%にひきあげられた1996年度には法人税は23.3兆円でしたが、2010年度には14.8兆円まで下がっています。反対に、消費税は1996年度に7.6兆円、2010年度には12.7兆円にアップしています。大企業が払う分を私たちが消費税で負担する格好となっています。大企業がその社会的責任を果たさず、庶民におしつけるのはおかしいと思いませんか?
 それにもかかわらず、財界はまだまだ、法人税の引き下げを要望し、その減った分を消費税10%でまかなおうとしています。
 “百害あって一利なし” これが、「社会保障・税一体改革」です。

X−2 消費税を引き上げて社会保障に使うと説明されていますが本当ですか?

イラスト 増税された消費税は、全部が社会保障に回るわけではありません。政府は国会で、「増税5%分の13.5兆円のうち、10.8兆円は赤字国債の補填に回す予定」と野党の質問に答えています。増税しても、全てが社会保障には使われないのです。
 また、社会保障のためと導入された消費税ですが、2002年の小泉構造内閣の時から、社会保障費は毎年2200億円(初年度3000億円)も削られ、これまでに合計12兆4千億円も減らされています。
 増税をしなくても、財源はあります。
 1989年導入の消費税収はこれまでに224兆円になりました。逆に法人税は208兆円も下がっています。法人税を元に戻せば、消費税に変わることができます。多くの国民が反対の声をあげている原発の推進予算は4200億円。軍事費もたくさんあります。在日米軍への思いやり予算1800億円、ヘリ空母1200億円、F35戦闘機600億円、墜落で話題のオスプレイは70億円。自分が投票していない政党へもお金がまわる政党助成金は320億円。不要であったり、急いで作る必要のない大型公共事業予算は国と地方あわせて2兆円近く。これらの費用を社会保障へまわしていけば、消費税を増税しなくても充分に間に合います。

X−3 「一体改革」の中で、介護制度はどのように見直されようとしていますか?

 介護制度は2つの柱で改革を進めようとされています。
 第1に、介護保険制度の改革です。
 給付の「効率化・重点化」として、軽度の介護や施設を縮小し、切り捨てる方向が打ち出されています。今回の改定で制度化された「介護予防・日常生活総合事業」は、要支援1、2を介護保険の対象から外していく布石ともいえるでしょう。あわせて負担増も計画されており、ケアプランの有料化、自己負担の2割引き上げもねらわれています。
 第2に、2025年に向けた介護・医療提供体制づくりです。国にとって、「効率的」で「安上がり」な体制づくりをすすめようというものです。
 「入院から在宅へ」の考えを基本とした「病院・病床機能の再編」とその受け皿としての「地域包括ケアの実現」が改革の車の両輪とされています。今回の改定で、定期巡回・随時訪問介護看護や複合型サービスなどの新事業が導入され、病院から在宅へのシフトが太く位置づけられています。介護療養病床の廃止もその一環です。新たな「住まい」(サービス付き高齢者向け住宅)が制度化されましたが、低所得者のための「住まい」の保障はなく、問題は解決されません。
 また、「医療から介護へ」の流れとして、介護職による喀痰吸引などの医療行為が解禁され、医療の担い手を介護職へ押しつけることも始まっています。看取りや肺炎などの軽度医療も施設で行えば加算がつくように点数誘導がされています。介護は医療の下請けではありません。介護と医療はその視点・目的が違います。利用者の方の“生活を整え、彩りをそえる”私たち介護現場・従事者のやりがいにも大きく関わる問題です。
 さらに、介護の現場には大手企業が参入し始め、生活を支える介護が市場化されようとしています。
 国が保障する制度(公助・共助)は縮小し、高齢者を支えることを止め、自分たちで支え合うこと(自助、互助)を押しつけてきています。

X−4 消費税増税を止めることは、もう出来ないのですか?

 止める道筋は、いくつもあります。
 今回成立した消費税増税法には「景気条項」という付則があります。税率引き上げの条件として「経済成長率で名目3%、実質2%を目指す」となっていて、この条件に達しなければ、増税に待ったをかけることができます。そして、この数字は過去10年間で一度も達成できていません。
 また、増税の最終的判断は2013年秋ごろに閣議決定で決まる予定です。その前には必ず選挙が行われます。増税反対の議員が多数になれば、増税をしない判断をさせることができます。私たちの声を聞く国会を作ることが大切になります。
 今回の消費税増税をめぐるたたかいも、衆議院では7つの野党が共同して内閣不信任決議案を提出しました。そして自民党も不信任案提出を言い出さざるをえなくなりました。
 最後は民自公の密室談合で決まってしまいましたが、廃案へあと一歩のところまで追い詰めたのです。消費税増税で、利用者さんや私たちの生活に大きな負担がのしかかります。「増税NO」の声を引き続き、あげていきましょう。

図

 
全日本民医連
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