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民医連新聞

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副作用モニター情報〈622〉 エンレスト錠による腎機能障害

 今回は、エンレスト(サクビトリルバルサルタン)と利尿剤を併用した結果、脱水による腎機能障害が発生した症例を紹介します。

症例)80代男性
併用薬:フロセミド80mg、スピロノラクトン75mg、フルイトラン1mg、トルバプタン3.75mg、エナラプリルなど
1日目:心不全の増悪で入院。フロセミド注20mg/日開始
3日目:エンレスト導入のため、エナラプリル中止
5日目:エンレスト1回50mg、1日2回開始
6日目:フロセミド注終了
9日目:腎機能低下によりトルバプタン中止
16日目:スピロノラクトン、フルイトラン中止、フロセミド80mg→20mg
18日目:フロセミド、エンレスト中止
22日目:腎機能改善、利尿剤は再開せずに経過観察

* * *

 エンレストはサクビトリルとバルサルタンに分解され、それぞれネプリライシン(NEP)およびアンジオテンシンII受容体を阻害します。サクビトリルは、活性体のサクビトリラートに代謝されることで、NEPを阻害します。この過程で、内因性ナトリウム利尿ペプチドの血中濃度が上昇し、利尿作用や血管拡張作用が促進されます。サクビトリラートの尿中排泄率は約55%であり、eGFR30mL/分/1.73平方メートル未満の高度腎機能障害患者では、健常者と比べてAUC(薬が体内でどれだけ長く、どれだけ多く存在するかを数値で表したもの)が2.7倍に上昇すると報告されています。これにより、利尿作用が強まり、脱水のリスクが高くなる可能性があります。
 本症例では、腎機能障害を有する患者に複数の利尿剤とエンレストを投与した結果、過度の利尿による腎血流量の低下と脱水が発生し、その結果、腎機能障害がさらに悪化したと考えられます。
 エンレストを開始する際には、治療開始時およびその後の定期的な腎機能評価と利尿剤の適切な調整が重要でしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1813号 2024年9月2日号)

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