副作用モニター情報〈620〉 ポラプレジンク、クロピドグレルによる貧血、白血球減少症
胃潰瘍治療剤ポラプレジンクは、成分に亜鉛(Zn)を含むことから、亜鉛欠乏に応用されることがあります。また、抗血小板剤クロピドグレルは、造血障害を起こすことで知られるチクロピジンとおなじチエノピリジン系薬剤です。今回は、2剤併用時に貧血、白血球(WBC)減少などの副作用が出現した症例を紹介します。
症例) 70代男性、透析中
2年3カ月前:亜鉛欠乏症に対してポラプレジンクOD錠150mg/日を開始。Zn:48μg/dL、Hb:11.2g/dL
3カ月前:A病院にて閉塞性動脈硬化症の血管内治療後、クロピドグレル錠75mg/日、アスピリン腸溶錠、ランソプラゾールOD錠を開始。WBC:7300/μL、Hb:11.6g/dL
発症日:貧血精査目的にて入院。WBC:1700/μL、Hb:7.0g/dLにて輸血施行
数日後:貧血精査、足趾潰瘍処置のためA病院へ転院。貧血の被疑薬として、ポラプレジンクOD錠中止。WBC:2000/μL、Hb:8.2g/dL、血清銅(Cu):3μg/dL、Zn:113μg/dL
1カ月後:再度貧血進行あり、再入院。WBC:1600/μL、Hb:5.5g/dLにて輸血施行。汎血球減少の被疑薬としてクロピドグレル錠中止
2カ月後:WBC:4900/μL、Hb:9.0g/dL、Cu:10μg/dL
3カ月後:WBC:4700/μL、Hb:11.5g/dL、Cu:36μg/dL
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亜鉛は腸管において銅の吸収と拮抗(きっこう)するため、長期に投与することで造血障害を起こす銅欠乏に陥る可能性があります。この症例では、当初はポラプレジンクを被疑薬と判断しましたが、中止後も貧血と白血球減少が進行しました。
Cu値の回復とともに貧血は改善、WBC値はクロピドグレル中止後にようやく回復がみられ、クロピドグレルによるWBC減少の可能性も浮かび上がりました。クロピドグレルによる無顆粒(かりゅう)球症の副作用の好発時期は、開始後2カ月とされており、本症例における症状出現時期と重なります。
副作用の出現には複数の薬剤が関連している場合がありますので、一つひとつの薬剤に注意を払いましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1811号 2024年8月5日号)
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