副作用モニター情報〈613〉 ステロイド点眼液による眼圧上昇
点眼ステロイド製剤の添付文書には「連用により数週間後から眼圧亢進、緑内障が現れることがある」との記載があります。1965年の論文ではありますが、0.1%デキサメタゾン点眼薬を1日3回で4週間続け、約30%の人は6mmHg以上、約5%の人は16mmHg以上の眼圧上昇をきたしたとの報告があります。当モニターへの報告を調査したところ、ステロイド点眼で眼圧が上昇した報告は、0.1%ベタメタゾン製剤で2例ありました。ベタメタゾンはデキサメタゾンの立体異性体で、効力はほぼ同じです。
症例1)70代後半女性。内服のステロイド服用歴なし。
白内障術後にベタメタゾンリン酸エステルNa眼耳鼻科用液0.1%、ブロムフェナクNa点眼液を1日2回で開始。投与開始3カ月18日後に「眼がコロコロする」ため眼圧を測定、術前の15mmHgから37mmHgに上昇していた。ラタノプロスト点眼液にて治療。13日後に眼圧は正常化し、ラタノプロスト点眼液中止。
症例2)60代後半女性。
左翼状片の術後にベタメタゾンリン酸エステルNa眼耳鼻科用液0.1%、オフロキサシン点眼液を左目1日3回開始。その後、眼圧は10~15mmHgで推移していた。
投与開始1年3カ月後に左目眼圧が20~22mmHgへと上昇したため、点眼を中止。1カ月後に眼圧は11mmHgに回復。
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ステロイドによる眼圧上昇は、ステロイドの種類や投与経路にかかわらず用量依存性で、点眼や結膜下注射などの眼局所への投与がもっとも危険です。短期間であれば通常可逆的で、早期に発見し、点眼中止や点眼回数を減らすことで、1~4週間で眼圧は正常化することが多いとされています。1瓶5mLは約100滴分で、1日4回片目点眼の場合、約25日分です。具体的にいつまで使用するのか明確にし、高濃度製剤においては、2瓶目以降を使用の際は眼圧上昇に対する注意喚起が必要でしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1804号 2024年4月15日号)
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