副作用モニター情報〈593〉 メトロニダゾールによる抗菌薬関連脳症
メトロニダゾール(商品名:フラジール錠®、アネメトロ点滴静注®)は嫌気性菌および原虫に有効な抗菌薬です。悪心・胃部不快感などの消化器症状や発疹などが副作用として報告されていますが、まれに中枢性神経障害が起こることもあり、メトロニダゾールは抗菌薬関連脳症の原因となる代表的な薬剤として知られています。その症状として構音障害、歩行障害、四肢失調、意識変容、末梢(まっしょう)神経障害などがあります。正確な機序はわかっていませんが、メトロニダゾールの中止により、ほとんどの症例で症状は改善します。
当モニターでも過去に注意喚起事例として紹介していますが(直近は2018年5月21日付〈495〉)、新たに症例が報告されたため紹介します。
症例)50代男性。体重65kg
多発性脳膿瘍に対して、抗生剤点滴(セフトリアキソン注、アネメトロ点滴静注®)6週間投与。その後、内服薬(レボフロキサシン錠、フラジール錠®1500mg/日)へ切り替えて治療継続していた。治療開始後約9週間経過時点で頭痛・吐き気・開眼困難(左が見えにくい)の訴えがあり、併用していたチアプリド錠を中止。頭痛はカロナール錠を服用して改善傾向。しかし、その他の症状はチアプリド中止後も残存。
数日後、ふらつきも現れた際にメトロニダゾール脳症の指摘があり、フラジール錠を中止。中止後3日までにふらつきや失調症状の改善。脳膿瘍も縮小/ほぼ消失し、治療は終了。
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メトロニダゾール脳症のリスク因子としては、高用量や長期での投与、高齢、肝疾患、糖尿病・アルコール多飲などの代謝異常があげられます。今回の症例も高用量での長期投与や、2型糖尿病のリスク因子を有している人でした。一方で、低用量や短期間投与でもメトロニダゾール脳症の発症例があり、前述のリスク因子を有していない場合にも起こりうることに留意しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
〈参考文献〉
・感染症学雑誌 89:559~566,2015
・J Neurol. 2018 Dec 7. doi:10.1007/s00415-018-9147-6
(民医連新聞 第1781号 2023年4月17日)
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