副作用モニター情報〈581〉 ベオーバ錠による尿路感染症
ベオーバ錠(一般名:ビベグロン)は、過活動膀胱(ぼうこう)における尿意切迫感、頻尿および切迫性失禁を適応症とする薬剤で、β3アドレナリン受容体に作用して、膀胱平滑筋を弛緩(しかん)させ、膀胱容量を増大させることで、畜尿機能を亢進(こうしん)するとされています。
今回、本薬剤で尿路感染症をくり返した疑いのある症例が報告されましたので、紹介します。
症例)70代女性
(現病歴)高血圧、糖尿病、脂質異常症、過活動膀胱
服用開始日:かかりつけのA診療所にて頻尿に対してトビエース錠が処方されていたが、口渇の副作用があり、ベオーバ錠50mgに変更となる。
服用開始5カ月:後頭部の痛みにてB病院で精査した際、尿の混濁あり。「腎炎になるところだった」と言われ、ベオーバ錠が被疑薬として医師の指示で中止となる。
その後のお薬手帳の確認で、ベオーバ錠開始後、1カ月に1回程度、抗菌剤(トスフロキサシン)が処方されていたことがわかった。
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βアドレナリン受容体は生体内に3種類存在し、それぞれ異なる生理作用を有しています。β1受容体は心筋、β2受容体は血管や気管支、β3受容体は消化器官の平滑筋に発現しており、β1、β2に作用すると循環器系や呼吸器系に影響が出る可能性があります。
ベオーバ錠は選択的β3アドレナリン受容体作動薬で、抗コリン薬や類薬のミラベグロンに比べて副作用が少なく、併用禁忌薬がない点や、肝機能障害、腎機能障害患者で用量調節が不要な点でも使いやすい薬剤です。
しかしながら、添付文書によると尿路感染(膀胱炎など)の副作用が1~2%の頻度で発生しています。また、市販後調査(6カ月)の結果でもっとも多かった副作用として尿閉が報告されており、便秘、口内乾燥、動(どう)悸(き)なども報告されているため注意が必要です。
この症例では、薬剤開始早期から副作用が出現していた可能性があります。膀胱の残尿量が増えると尿路感染のリスクも上がるということを念頭に置いて、副作用の早期発見に努めましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1768号 2022年9月19日)
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