副作用モニター情報〈575〉 ノベルジン錠による胃腸障害
亜鉛含有製剤ノベルジン錠(一般名:酢酸亜鉛水和物)は2015年2月にウィルソン病治療薬として発売されましたが、かねてより低亜鉛血症の補充療法の可能性が期待されていました。日本では低亜鉛血症に対して承認された治療薬はなく、胃潰瘍治療剤ポラプレジンクが主に代用されてきましたが、2017年3月、ノベルジンに低亜鉛血症の適応追加が認められました。そのノベルジンの副作用について紹介します。
症例)70代女性
舌の痛みや味覚異常があり受診したところ、潜在性亜鉛欠乏症と診断された(血清亜鉛値76μg/dl正常値80~130μg/dl)。ノベルジン錠50㎎2錠を1日2回、朝夕食後で服用開始。投与開始2カ月後、定期受診の際に胃にむかつきがあると訴え、ノベルジン錠は中止となる。服用中止後、4~5日後に胃の症状は改善(中止時の亜鉛値は不明)。
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2017年に適応追加となってからまだ日が浅いため、当委員会への報告も少ないのですが、ノベルジンの副作用において胃部不快感や悪心・腹痛などの胃腸障害の割合は高くなっています。この消化器症状を軽減するために、低亜鉛血症治療としての用法は食後投与となっているため、患者に対して服用のタイミングをしっかり指導する必要があります。
さらに、亜鉛含有量はポラプレジンク75㎎あたり16.9㎎に対し、ノベルジン錠は1錠あたり25㎎または50㎎となっています。
このようにノベルジンはポラプレジンクと比べると1錠当たりの亜鉛含有量が多く、最大用量も150㎎まで使用できることから、血中の亜鉛濃度も高くなる傾向にあります。また、亜鉛と銅は小腸での吸収過程において競合するため、銅欠乏症のリスクも高くなります。そのため、ノベルジン錠服用の際は、尿中銅排せつ量のチェックをすることも注意喚起されています。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1762号 2022年6月20日)
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