新薬モニター 新型コロナウイルス 治療薬について
今回は、新型コロナウイルス感染症の治療薬について特集します。医療機関ではどのような薬が使われていて、どれくらい効果があるのかをお知らせします。
【レムデシビル】
2020年5月7日に特例承認されました。商品名はベクルリーです(特例承認については割愛)。30カ国、405の病院で入院中の患者を対象に実施した非盲検の比較臨床試験において、標準治療群と比較したレムデシビル群の死亡リスク比は0.95(95%信頼区間0.81~1.11)であったとする中間結果が発表されています。このリスク比の読み方は、死亡を最大で19%減少させるが、場合によっては11%増加させるという意味です。十分な効果があるとは言えない結果しか出ていないのが残念です。
【デキサメタゾン】
副腎皮質ホルモン(ステロイド)です。英国で行われた入院患者対象の大規模多施設無作為化オープンラベル試験で、デキサメタゾンの投与を受けた患者は、標準治療を受けた患者と比較して致死率が減少したことが示されました。この試験に参加した人数は6425人であり、デキサメタゾンを使った群の死亡率が21.6%、使わなかった群の死亡率が24.6%で、死亡率を改善しました(28日後に比較)。
しかし、効果は限定的です。酸素を必要とした患者以外では効果に差がなかったことから、一定以上の重症患者への投与が求められています。
【ファビピラビル】
商品名はアビガンであり、これまでも、新興型インフルエンザの発生で何度も報道されてきました。
十分な臨床試験は経ていませんが、PCR検査陰性化、発熱の点で、投与しなかった場合より早く回復する傾向があるとされています。しかし、まだ十分なRCT(ランダム化比較試験)が行われていないこと、死亡や重症化を阻止する効果は証明されていないことなど、使うには十分な根拠がありません。
今回は、主に治療に使う代表的な薬剤を解説しました。現在のところ、新型コロナウイルス感染症に関しては、いわゆる特効薬と言われるような薬剤はありません。患者自身の年齢や基礎疾患、免疫状態などによって予後が大きく違うのが現状です。今後、より良い薬剤の開発や、使い方の工夫などが出てくる可能性もありますが、リスクファクターの高い患者は、新型コロナウイルス感染症にかからないことがもっとも重要と考えられます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
参考)新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引4.1版
(民医連新聞 第1735号 2021年4月19日)
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