副作用モニター情報〈551〉 プラリア皮下注による低カルシウム(Ca)血症
プラリア皮下注(一般名:デノスマブ)は、破骨細胞の分化・活性化に必要なサイトカイン、「RANKL」に対するモノクローナル抗体製剤です。長期間破骨細胞の活動を抑制するため、6カ月に1回の投与でビスフォスフォネート製剤と同等の効果があるとされています。一方で低Ca血症を生じやすいため、(1)臨床試験では十分に投与されていたCaおよびビタミンDを薬剤(例:デノタス配合錠)として併用する、(2)定期的な採血による血清Ca値の確認を行う、以上2点が低Ca血症予防の観点から推奨されています。特に重度の腎障害患者では低Ca血症の発症リスクが高く、慎重投与となっています。
今回、慢性腎不全のある患者にプラリア皮下注を投与し、低Ca血症に陥った症例が報告されたため紹介します。
症例)60代女性。血清クレアチニン値
2.71mg/dl、推定クレアチニンクリアランス10.1ml/min。かかりつけ医とは別の整形外科で骨折後の治療を継続。かかりつけ医からふらつき精査目的で紹介され、採血の結果、補正Ca値5.2(正常値8.5~10)と低値のため、そのまま入院となった。低Ca血症に対し、アルファカルシドール製剤1.0〓/日、Ca製剤1500mg/日を投与開始。入院4日目になって、約6週間前にプラリア皮下注が投与されていたことが発覚し、薬剤性低Ca血症の治療に切り替え、Ca製剤を3000mg/日に増量。血清Ca値は徐々に回復し、入院11日目に補正Ca値9.3まで回復したため退院となった。
プラリア皮下注は外来診療で投与されることが多く、デノタス配合錠の服用歴がなければ、保険薬局の薬剤師がその投与の有無を完璧に把握することは困難です。また、お薬手帳に投与記録が残っている場合でも、投与間隔が長いため、さかのぼって確認することが難しく、保険薬局による安全性チェックが機能しない可能性があります。プラリア皮下注に限らず、投与間隔の長い注射製剤が外来で使用される場面は増えてきており、お薬手帳などを介した薬・診連携の構築が今後さらに重要となるでしょう。
(民医連新聞 第1733号 2021年3月15日)
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