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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

【新連載 改訂】54.ワクチンの副作用

民医連新聞」(第1699号2019年9月2日)に掲載した「副反応報告数にみるHPVワクチンの実際」を加え、2020年3月6日に改訂して掲載した。

ワクチンによるショック・皮膚反応報告

■沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン(DPTワクチン)

症例)0歳女児。1回目接種では異常なし。Ⅰ期2回目の接種の際、0.5mlを皮下へ注射した1時間後、全身性発赤が現れ、不機嫌に。1時間30分後、顔面・四肢・体幹に直径2~3mm大の膨隆疹が現れた。圧迫で消退し、紅班を伴い拡大した。入院し、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤を投与、改善したため退院した。接種後23時間が経過していた。

■インフルエンザワクチン

症例)10歳代女性。アレルギー既往なし。インフルエンザワクチン0.5mlを皮下注射した数分後、立っていられず、座り込んでしまった。全身に発赤、血圧が低下し、全身に振戦あり、血管確保できないためボスミン注0.2mlを皮下注射。その後、会話が可能になった。酸素分圧も低下していたため、酸素吸入しながら病院へ緊急入院。翌日には軽快し、退院となった。

 ワクチンによるアナフィラキシー反応や重篤な皮膚症状が報告されています。ワクチン接種時には、事前に問診などで投与の可否を判断します。しかし、問診で分からないケースも多くあります。接種後30分は、アナフィラキシー症状発現時の緊急処置を考慮し、待合室などで様子を観察することが必要です。患者様やご家族に説明し、協力を求めることが大切です。DPTワクチンでは、Ⅰ期で3回の接種ですが、2回目や3回目の方が副作用発現頻度は増えるといわれています。

なお、感染症情報センター「IDSC」のサイトにある予防接種ガイドライン(予防接種リサーチセンター)を参考にしてください。

(民医連新聞 第1382号 2006年6月19日)

 インフルエンザワクチンによる重大な副反応として、脳脊髄炎やギランバレー症候群(接種後2週間が発症のピークで6週間以内)があり、副作用モニターにも報告があがっています。インフルエンザワクチンは接種機会が多く、またギランバレー症候群は自然発症との鑑別が困難ですが、経過の観察、因果関係に疑いをもつことが、早期対応による重症化を防ぐことにつながります。

■インフルエンザワクチン接種後に発症した急性心筋炎

症例)10歳代女性。A医でインフルエンザワクチンの2回目を接種(初回2週前)。その夜から発熱があり、翌日、A医を再度受診する。感冒との診断で点滴を受け、薬剤を処方され服用する。次の日、解熱するも全身倦怠感が強く、腰背部痛あり、顔色不良となった。B病院を受診した時には全身状態不良、自立歩行も困難で、顔面蒼白、血圧低下(60㎜Hg/S)を認め、ショック状態と診断。腹腔内出血による出血性ショックを疑い、輸液、血液検査、腹部CT検査を実施したが出血は認められず。BUN、CREが高値で、腎前性腎不全と判断。しかし、胸部レントゲン、心電図、心エコーで左室びまん性収縮不良が認められ、急性心筋炎を疑ってC病院に救急搬送となる。同院でも循環動態の安定をはかるが、完全房室ブロックに続き心室頻拍が出現し、体外ペーシング、リドカインを施行。人工心肺、大動脈内バルーンパンピングなどの導入を考えたが、心室細動が出現し、蘇生処置の効なく亡くなった。

 インフルエンザの流行期に、インフルエンザウイルス性の心筋炎が観察されることが報告されています。ウイルス性または特発性心筋炎のうちインフルエンザウイルスによるものは10%以下です。比較的予後は良好ですが、いずれも感冒症状で始まり、感冒との鑑別がつきにくく、まれに劇症型となるケースがあり注意が必要です。

 本症例は、剖検をしていないため、インフルエンザウイルスによるものかどうかは判断できません。が、インフルエンザワクチンの2回目接種直後に、症状が急激に起こっていることから、免疫学的機序も考えられます。心肺補助循環により救命し得たという症例もあり、対処としては、初期症状として感冒症状と胸痛、腰背部痛、あるいは腹痛に注意し、心筋炎を少しでも疑った場合は、心電図、胸部レントゲン、心エコーを躊躇なく行う必要があります。心筋炎が否定できない場合は、循環器科へのコンサルトや心肺補助循環設備を備えた施設に転送する必要があります。

(民医連新聞 第1374号 2006年2月20日)

■肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)による蜂窩織炎

 肺炎球菌ワクチンのニューモバックスで、副反応が報告されています。

 「肺炎」は日本人の死因で第3位です(1位:悪性腫瘍、2位:心疾患)。厚労省発表のこのデータは全年齢が対象ですが、65歳以上に絞れば肺炎で亡くなる人は非常に多いのが現状です。

 普通に社会生活を営む中でかかる肺炎を市中肺炎といいます。その原因菌で最も多いのが肺炎球菌で、これに対するワクチンがニューモバックスRNP(23価肺炎球菌夾膜ポリサッカライドワクチン、以下ニューモバックス)です。2014年から65歳以上の高齢者に定期接種になりました。

 ニューモバックスによる副反応として報告されているのが、蜂窩織炎(ほうかしきえん)です。蜂窩織炎は、皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細菌感染症です。傷口などから入り込んだ細菌による感染が皮膚の深い部分にまで広がり、細胞の周りを広範囲に融解しながら細胞自体を壊死させます。「蜂窩」とはハチの巣のことで、顕微鏡で見ると見た目が似ているので、このような病名になりました。

症例1)70歳代女性。ニューモバックス接種から約10日後、左肩の接種部位に発赤・熱感・腫脹あり。蜂窩織炎と診断され入院。抗生剤で治療し、入院5日後には左肩の発赤・腫脹は治癒し、入院8日後に退院。

症例2)70歳代女性。ニューモバックス接種の翌日、自宅で倒れているところを隣人が発見し救急搬送、入院となる。左腕の接種部位のみ硬結、発赤を認め、抗生剤投与開始。接種2日後、吐き気・疼痛・熱感・発赤が増強。接種3日後、接種部位に水泡を形成。接種5日後、発赤・熱感は広範になるが、痛みは軽減。接種8日後には症状改善傾向、接種15日後に軽快した。

 この2例の他に、注射部位腫脹・疼痛・熱感などの副反応が多数報告されています。接種後、注射部位の反応が激しいようであれば、受診するよう説明して下さい。

(民医連新聞 第1625号 2016年8月1日)

■サーバリックス(子宮頸がんワクチン)の副作用

 サーバリックスは、子宮頸がん(HPV)ワクチンです。全日本民医連理事会は2013年6月に子宮頸がんワクチンについて「現時点でのがん予防の有用性についての評価は未だ困難であり、効果の持続時間や安全性についても今後の継続的な検証が必要である」との見解を発信しています。

 サーバリックスは有害事象の報告が多く、失神をはじめ、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、痙攣(けいれん)、ギランバレー症候群(GBS)、SLE(全身性エリテマトーデス)、若年性関節炎、末梢冷感、難治性疼痛、歩行障害、四肢痛、四肢の運動低下、筋力低下、筋骨格痛、感覚鈍麻、計算能力の低下などが挙げられています。その重篤性や未回復事例も報告され、ADEM、GBSが、添付文書の重大な副反応の項に追記となっている次第です。2009年12月の発売より現在に至るまで、民医連副作用モニターへの報告も4例と数少ないですが、挙げられています。

症例1)血管迷走神経反射:1回目接種し数分後に歩行時、気分不良にて後方に転倒、後頭部打撲。痙攣や嘔吐、呼吸困難、頭痛などはなし。意識清明だが顔面蒼白、BP83/47、PR43、SpO2 99%。補液にて症状改善。

症例2)腕の痛み、血管迷走神経反射:3回目接種5時間後、左手の注射部位の痛みあり、徐々に腕があがらなくなった。BP96/53、HR72、SpO2 96% 顔色不良、点滴入らず。水分摂取可能、吐き気少しあり、嘔吐はなし。腕の痛みは残っているが、補液にて症状改善。

症例3)蕁麻疹、神経調節性失神、痙攣:2回目接種翌日に、顔面・四肢の膨疹出現。接種2日後には全身の膨疹を自覚。失神2回、2度目には痙攣発作もあり、来院時、意識レベルの低下、上・下肢の痙攣。再度蕁麻疹出現、悪化のため、ポララミン注施行。蕁麻疹改善するも、痙攣は認めないが、再度発疹出現。抗ヒスタミン剤で対応、改善。

症例4)体調悪化:接種4日後、喉の痛み、頭痛、咳、感冒症状あり、処方。

 HPVワクチンのリスクとベネフィットの観点から、現在のHPVワクチンのワクチンとしての完成度は高くなく、その効果も不明と言わざるを得ません。効果の指標である抗体価の持続期間は10年未満と短いのです。日本の子宮頸がん検診受診率は諸外国に比べ低いのが現状です(欧米70~80%、日本 23.7%OECD調査、2007)。子宮頸がんに対して大事なことは、検診の徹底です。

(民医連新聞 第1565号 2014年2月3日)

■副反応報告数にみるHPVワクチンの実際

 HPVワクチンの副反応被害の実態についてみていきたいと思います。当副作用モニターでの副反応報告では、発売当初のもので、じんましん、神経調節性失神、けいれん、体調悪化(発熱、上気道感染)、血管迷走神経反射、腕の痛みが報告されています。

 厚生労働省の発表では、2018年8月31日までに報告された有害事象は、サーバリックスとガーダシル合計で3168件、うち重篤1821件(約57%)でした(接種者数約340万人)。

 これは、約1000人に1人の有害事象報告があり、そのうち半分以上が重篤であることを示しています。

 2018年5月時点で、HPVワクチンを被疑薬とした医薬品副作用被害救済制度による障害年金または障害児養育年金の支給を受けた患者は40人で、接種した100万人当たり11.765人が認定されています。他の定期接種ワクチンの予防接種健康被害救済制度による障害年金、障害児養育年金、遺族年金または遺族一時金の給付を受けた人は、100万人当たり1.075人です。

 副作用被害救済制度の申請にかかわったことがある人なら、申請が認められるまでの厳しさを経験していると思います。副作用救済制度の認定は原則として接種後1カ月後までとされており、接種時の疼痛と痛みの恐怖から引き起こされる心身の反応(機能性身体症状)のみが認められたものです。実際には認定されていない重篤事例も存在します。

 それでも、HPVワクチンでの障害認定数は著しく高い数値となっています。

 HPVワクチンは世界的に効果が認められたものだとして推奨したい考えの人も、副反応被害の因果関係が明らかになるまで積極的勧奨は控えるべきという考えの人も、いま一度、客観的で冷静な論議が求められます。

(民医連新聞 第1699号 2019年9月2日)

画像提供 京都民医連 一般社団法人メディカプラン京都
http://sukoyaka-pharmacy.com/

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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約640の医療機関や354の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】バックナンバ->
  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別
  45.ST合剤の使用をめぐる問題点
  46.抗真菌剤の副作用
  47.メトロニダゾールの副作用
  48.イベルメクチン(疥癬を治療するお薬)の副作用
  49.鎮咳去痰剤による注意すべき副作用
  50.総合感冒剤による副作用
  51.市販薬(一般用医薬品)の副作用
  52.健康食品・サプリメントによる副作用
  53.禁煙補助薬(チャンピックスⓇ、ニコチネルⓇ)の副作用

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