副作用モニター情報〈310〉 チャンピックス(禁煙用薬)の精神神経症状に注意
今回の副作用モニターでは、「チャンピックスによる、抑うつ症状の増悪・不眠・嘔気」が報告されました。
【症例】70代前半男性、基礎疾患にうつ病あり。ニコチンパッチで禁煙に失敗した経過があり、本人の希望でチャンピックスによる治療を開始。1回の服用で嘔気が起こり、開始後4日目で不眠・うつの悪化があり、自己中止。中止によって症状は改善した。
「チャンピックス(R)錠」(一般名:バレニクリン)は、禁煙を目的に開発された経口禁煙補助薬です。
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同剤は、米国で2006年8月に「Chantix(R)」の製品名で発売され、EUでも同年12月に「Champix(R)」の製品名で販売が開始されました。日本では2008年5月に販売が開始されました。
チャンピックスはニコチンを含まず、脳内に分布するα4β2ニコチン受容体に高い結合親和性をもちます。これによって禁煙に伴う離脱症状やタバコへの切望感を軽減します。
一方で、同剤を服用中に再喫煙した場合には、α4β2ニコチン受容体にニコチンが結合するのを阻害し、拮抗薬(アンタゴニスト)として作用します。これによって、喫煙から得られる満足感を抑制します。
米国での調査では、チャンピックス服用者に重篤な精神神経症状が認められています。その内容には、行動の変化・激越(興奮など)・抑うつ気分・自殺念慮・自殺企図・自殺既遂が含まれています。
これらの症状は、精神疾患に罹患していない服用者にも認められており、精神疾患に罹患している服用者では、症状が悪化した例もあります。
2008年2月に、米国の食品医薬品局(FDA)から、同剤の重篤な精神症状に関する通知が出されました。
通知では、製造業者であるファイザー社に対し、添付文書の「警告」及び「使用上の注意」の項に、重篤な精神神経症状に関する情報を、より強調して記載するよう求めました。
医療従事者は、チャンピックス服用者に重篤な精神神経症状の兆候がないか、よく観察する必要があります。処方前に精神疾患の既往を聴取することも大切です。
(民医連新聞 第1452号 2009年5月18日)
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