副作用モニター情報〈178〉 肝硬変患者へのアルダクトンA投与で女性化乳房
【症例】
61才男性、アルコール性肝硬変で入院。アルダクトンA®25mg投与開始。その後ラシックス®も開始。2カ月後両乳輪の痛みを訴えたため、中止となる。10日目、痛みがなくなるが、肝硬変の悪化によりアルダクトンA®再開で痛みあり。チアジド、カリウム剤も併用。
アルダクトンA®の女性化乳房は、成分であるスピロノラクトンの代謝産物が女性ホルモン作用を持つことによっておこる必発の副作用です。発現は用量依存 性で、出現期間も高用量ほど短く75~150mg/日で16.6%、150mg/日以上では52・5%に出現します。通常は投薬を中止すれば、1~2カ月で消失しますが、投与期間が長くなると乳腺組織の繊維化が進行し、消退しにくくなります。また、肝硬変も病態として性ホルモンの代謝に複雑な変化を起こ し、女性化作用などを引き起こすため、症例としては複雑になります。
肝硬変の浮腫には二次性アルドステロン症が背景にあるため、抗アルドステロン利尿薬(アルダクトンA®)が第一選択になります。しかし副作用が現れた症 例ではカリウム剤を補充しながら、ループ利尿剤(ラシックス®)やチアジド利尿剤(フルイトラン®)の代替えも考える必要があるでしょう。
今回の症例では薬剤中止で痛みはなくなりましたが、肝硬変の憎悪に対して再投与を余儀なくされ、副作用を抱えながらも継続したケースです。
肝硬変の浮腫治療は、病状憎悪とスピロノラクトンの副作用の両方からくる女性化作用に注意し、「腫れや痛み」といった患者の訴え、QOLを第一に考慮し、投与薬剤を勘案する必要があるでしょう。
(関東甲信越副作用モニター交流会症例検討より)
(注:〓は○の中にR)
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