副作用モニター情報〈169〉 インフルエンザ脳炎脳症患者に対するフェナクナトリウム製剤の使用について
インフルエンザ脳炎脳症の患者に対し、解熱を目的としてジクロフェナクナトリウム製剤(ボルタレン等)を投与した場合、生存率など、予後が悪化する傾向を示す複数の疫学的研究が報告され、昨年11月末緊急安全情報と添付文書改訂が行われました。
添付文書上「インフルエンザの臨床経過中に脳炎脳症(けいれん、意識障害等)を発症した患者には投与禁忌」の扱いとなりました。これまでの報告を受けて 日本小児科学会は、「解熱剤の非使用例でも本症は発症しており、死亡者の五分の一が非使用例であることから、非ステロイド系消炎鎮痛剤(以下NSAID) が発症因子であるとは証明されていない。しかしながら、発症した場合の致命率についてはジクロフェナクナトリウム使用例で有意に高く、他のNSAIDにつ いては、調査症例数が少なく現段階でその関連性が明確になっていないため引き続き調査が必要である。一方アセトアミノフェンによる致命率の上昇はなく、イ ンフルエンザに伴う発熱に対してはアセトアミノフェンが推奨される」との見解を出しています。
インフルエンザ脳炎脳症の特徴的な病理所見として、脳および全身の血管の障害が見いだされています。ジクロフェナクナトリウムをはじめとするNSAID はプロスタグランディンの合成を阻害する薬理作用を持つため、血管への影響が懸念され、本症の悪化に関与する可能性が考えられています。インフルエンザ等 のウィルス性発熱性疾患時の対応として、解熱を必要とする際には全身の血管系に影響を及ぼさないアセトアミノフェンが推奨されます。
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