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民医連新聞

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相談室日誌 連載578 親族と疎遠な孤立死の事例 患者の気持ちに寄り添う支援(岡山)

 60代前半のAさんは、約一年前に上顎洞がんの診断を受け、前医で手術・化学療法後通院していましたが、治療困難となり、自宅から近い当院に紹介、入院しました。前医入院中の主治医より県外在住の姉に連絡をしましたが、かかわりを拒否し、前医のSWが司法書士を紹介、死後事務委任契約の準備中でした。転院当時は独歩・経口摂取可能でしたが、徐々にがん性疼痛(とうつう)が強まり医療用麻薬を増量し、痛みをコントロールする状況に。入院中、病室で花のデッサンをする姿をよく見ました。昔は彫り師をしていて、全身の入れ墨も自身で彫ったと。両親が幼少期に離婚。姉とともに母親に引き取られ生育。結婚後子どもが幼少期に離婚、以後疎遠に。姉と時々連絡は取っていましたが、最近は疎遠。コロナ禍で仕事が不況になり、2年前、当地へ仕事を求めて転居。発病後仕事ができなくなり、傷病手当金の給付がありましたが、社宅の家賃と社会保険料を支払うと入院医療費・生活費を賄う余裕はない状況でした。
 転院後、主治医より、「次の春までいのちがもつかわからない」と聞かされたAさんは、感情を表出することなく冷静に受け止めている印象でした。
 Aさんは姉に連絡しましたが、「自分のことは自分でするようにと言われ、姉には迷惑をかけたくない」と。終末期に向かうAさんの姿を目の当たりにし、姉の気持ちを確かめたいと思い、了承を得て姉に何度も電話してみましたが連絡がつきません。
 転院1カ月後に永眠。葬祭は、死後事務委任契約にもとづき司法書士が対応。遺体が葬儀社に引き取られた後、姉が対面しましたが、「遺骨は拾わなくていい」とすぐに帰り、関係修復には至りませんでした。本人死亡後は傷病手当金の請求権は相続人でないと行使できず、親族は相続放棄する可能性が高いため入院費の支払いもできないままとなりました。
 SWとして患者、家族の支援に携わるなかで、家族との関係性・歴史にも思いをはせながら、患者の真の気持ちに寄り添う支援をしたいと思います。親族と疎遠な孤立死が増えるなかで、亡くなった本人が利用することができたはずの制度を活用するシステムも必要ではないかと思います。

(民医連新聞 第1825号 2025年3月17日号)

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