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民医連新聞

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診察室から がんばれる活力は頼もしい仲間

 80代の女性(Aさん)が半年前から嘔気(おうき)・嘔吐(おうと)があり、4カ月で体重が約15kg減ってしまったと外来受診しました。検査で進行胃がんとがん性腹水があり、食道は浸潤で狭窄(きょうさく)している状態でした。
 入院予定でしたが、前日点滴に来た時に入院を拒否し、「1割なのに病院でのお金がこんなにかかると思わなかった。治らない病気ならいろいろ調べても仕方ない」とAさん。急きょ金銭的な面でSWに介入をお願いし、対応してもらいました。数日外来で点滴しましたが、段階的に体力が低下していき、10日後には食事がほとんど食べられなくなっていました。
 経過から予後は長くないと考えられ、伝えたところ、Aさんは一人暮らしで喫茶店を営んでおり、「できるだけ長く家で過ごしたい。なじみのお客さんに対応したい」と希望しました。身内は高齢の兄のみで、身の周りのことをしてもらう人もおらず、どうしたものかと悩みました。往診や訪問看護はお金がかかるのではないかと心配し、スタッフに医療で訪問看護だけでも導入できないかと相談すると、すぐに対応してくれて在宅で点滴することができました。
 しかし数日して動けなくなり、救急車で来院し、入院。新型コロナウイルスに感染していました。面会制限もあり、何とか隔離明けまで無事でいてくれたらと祈る気持ちでした。最終的に隔離明けの3日後に亡くなりました。受診してから1カ月の短い間でしたが、Aさんの最期に病院がかかわることで、少しは役に立てたかなあと思いました。ふり返ると、私一人ではここまでできなかったし、各スタッフが迅速に動いて、いっしょに考えて前向きに協力してくれて、本当にありがたかったです。
 このような対応ができるのは民医連の病院ならではですし、私が働いている病院は素敵だなと感じるところで、医者として多忙でも何とかがんばれる活力になっていると思います。これからもスタッフに協力してもらいながら、その働きを大切にできる医者でありたいです。(豊岡志帆、香川・高松平和病院)

(民医連新聞 第1825号 2025年3月17日号)

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