相談室日誌 連載577 貧困ビジネスから老健入所 変化、発展する力を支援(大阪)
Aさんは70代の男性。急性期病院での左下肢切断の術後入院の後、療養継続とリハビリ目的で当施設に入所しました。入院するまでは貧困ビジネスが管理運営するアパートに住んでいましたが、急性期病院のSWの適切な対応で、退院時にアパートを引き払い、入所にたどりつきました。
Aさんは高校を卒業後、東京、名古屋、大阪などで日雇い仕事につき、家族とも疎遠。ホームレスの期間も長く、現在は生活保護を利用し、療育手帳を所持しています。今回の入院はアパート管理人の救急搬送依頼によるもの。管理人はAさんの通帳・キャッシュカードを預かり、必要時に公共料金の支払いなどを代行、月に2回ほどわずかな生活費をAさんに届けていました。入所後、返却されましたが、Aさんは出納帳の内容に納得できない様子でした。
また知人BさんがAさんに壊れかけたテレビを勝手に持参。Bさんは「テレビの代金を支払うついでに俺の生活費を渡せ」とか、以前Aさんが別の人に借りた借金を「俺が返済してきたから金をよこせ」など、Aさんの携帯電話に執拗(しつよう)に電話をかけてきました。Aさんは、お金をBさんに渡してほしいと訴えます。知人とのつながりを切りたくない気持ちもあったのでしょう。「Aさんの気持ちはわかるけど、だまされていませんか?」とくり返し話しました。
「施設から出た後、だまされる人生はやめて、残りの人生がんばりましょうよ」と伝えると、「そうやなぁ」とつぶやきました。Aさんの希望はアパートを借りて独居生活を再開、意中の女性を迎え入れて結婚したいというもの。独居できる能力を獲得できているか、だまされないように金銭管理をどうするのか、保証人なしでアパートが借りられるのかなど、課題は山積みです。施設退所(サ高住など)の方が安心・安全という結果となるかもしれません。
超強化型の老健施設の相談員業務は多忙です。Aさんのような社会的課題を抱えた人に寄り添う支援をしつつ、施設の加算や基準に対応する業務をこなさなければなりません。それでも人間の素晴らしさ、変化、発展する力を信じて、職員と力を合わせて、仕事に立ち向かう今日このごろです。
(民医連新聞 第1824号 2025年3月3日号)
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