ケアの倫理の視点から真の復旧・復興を 1/19 石川民医連全職員研修会
石川民医連は1月19日、「いのちと人権を守り、能登半島地震(昨年1月1日)からの真の復旧・復興をすすめよう~ケアの倫理の視点から」をテーマに、金沢市内で全職員研修会を開催。386人が参加しました。(多田重正記者)
■奮闘する職員の実践
午前中は集会と同じテーマで、シンポジウムを行い、最初に4つの指定報告がありました。
県連事務局長の寺山公平さん(事務)は、能登半島地震・豪雨災害に対する県連の活動を報告。全国支援も受け、被災地支援、地域訪問、健康チェック、生活相談、泥出し支援などにとりくんできたことを話しました。昨年9月末まで(現在は今年6月末まで)だった被災者の医療費一部負担・介護利用料免除の延長を求めた要請に「国の通知を待つ」とした県の主体性のなさも指摘し、人権が守られる復旧・復興に向けた長期間のとりくみの必要性を訴えました。
輪島診療所所長の山本悟さん(医師)は道路や家屋が損壊、電柱が傾き、停電や断水など、広範囲で甚大な被害が出た、震災当時の状況を報告。多数の職員が被災し、避難所や診療所に寝泊まりする職員もいましたが、1月4日に診療開始。避難生活や被災状況などを聞きとりながら診療を行い、介護スタッフも奮闘。民医連内外の支援にもささえられた1年をふり返り、「これからも、がんばっていきたい」と決意を語りました。
石川勤医協健康推進部の水上幸夫さん(事務)は、昨年秋に行った能登地域の友の会会員対象の対話アンケートの結果を紹介。石川県健康友の会連合会奥能登ブロックは2728世帯(5962人)あり、春に訪問済み、または友の会で状況を把握している世帯を除く、2325世帯を対象に1625件を訪問しました。水上さんは対話記録がある488件中、輪島市の市街地を中心とする一部の集計を報告。まだ「担当者個人の報告」ですが、今年1月15日現在も避難所で生活する人が133人。健康状態が「よくない」「とても悪い」が合計66人。生活環境が「あまりよくない」「とても悪い」が101人で「電気も水もまだ通っていない」との声も。水上さんはつながりをつくり継続すること、集落など小さな単位で生活支援を行うよう行政に働きかける重要性などを強調しました。
奥能登フィールド実行委員会事務局の小池隆行さん(石川民医連事務局次長、事務)は、昨年8月に2日間の日程で行った奥能登フィールドワークについて報告。医系学生2人を含む21人で、震災時に孤立した大沢地域(輪島市)を戸別訪問し、地域の診療所や病院も訪ねて交流。石川県健康友の会連合会奥能登ブロック専従の佐渡麗子さんにも話を聞き、「被害の大きさに衝撃を受けた」などの感想が寄せられました。
■心身ともに限界の被災者
続いて、熊本学園大学教授の高林秀明さんが講演。高林さんはこの日までに12回輪島市に入って、被災地の現状を見てきました。昨年1月半ばに入った避難所(小学校の体育館)は寒く、毛布にくるまっても「顔が刺されるように痛くて眠れない」。食事も粗末で、段ボールベッドやパーテーションもなく、「健康を保つのは難しい」と高林さん。さらに同市は、本来1人用である4・5畳一間(1K、20㎡(単位の平方メートル))の仮設住宅に、2人まで入居させていると告発。狭すぎて、就寝時に夫婦の一方が三つ折りにした敷き布団の上に寝ている例もあり、「こうした環境が続けば、どれだけ健康に影響するか。人権にかかわる問題」と話しました。
また「被災者は心身ともに限界を超えており、いっそうの対話・交流が求められる」と高林さん。さらに被災地を見たときに「一人ひとりの声を聞き、応答しようとする」など「ケアの倫理が欠けている」と指摘。輪島市で仮設住宅をめぐり課題とされた土地の問題でも「役場が困っているから助けてと(住民に)言えばいい。土地はあるはず。人に頼む、依存する。そうすればかならず道は開ける」と話し、安心して暮らせる地域社会に向けた展望を語りました。
◇ ◇
午後は5会場で分散会を行い、医療・介護実践を交流。どの分散会でも「A氏と歩んだ11日間の避難生活」(輪島診療所)、「能登半島地震により被災した入院患者に関わって」(城北病院)など、能登半島地震・豪雨災害にかかわる発表があり、復旧・復興に向けた経験と思いを共有しました。
(民医連新聞 第1824号 2025年3月3日号)
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