副作用モニター情報〈632〉 ジクトルテープ®による低血圧
経皮吸収型ジクロフェナク製剤ジクトルテープ®は、成分が皮膚から吸収されて全身に効果を発揮する痛み止めで、同成分の内服薬、坐薬も汎用(はんよう)されています。今回は、ジクトルテープによる低血圧の報告を紹介します。
症例)40代 女性
初期の肩関節周囲炎に対して、ジクトルテープ75mg1日1~2枚で処方。
開始2日目:よく効いて痛みは軽減。
開始3日目:頭痛あり。血圧90/50。併用中のオルメサルタンとともに中止。
中止3日後:血圧は130/90に回復。その後、オルメサルタンは再開となる。
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ジクトルテープは、2021年5月の発売当初は「各種がんにおける鎮痛」のみを適応として承認され、「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘(けんしょう)炎における鎮痛・消炎」の適応は2022年6月に追加されました。
本剤は、貼付剤ですが、その部分だけの痛みや炎症を抑えるのではなく、全身を循環して効果を発揮します。同成分の内服薬などの場合、効果は1時間もすれば発現しますが、本剤はゆっくり血中濃度が上昇するため、12~24時間程度で相応の効果が得られ、毎日貼付し続ければ効果は持続することになります。
本剤の注意すべき事項は、通常の消炎鎮痛目的の貼付剤と違い、痛い部分に次々と貼ってはいけないということです。本剤3枚で内服薬および坐薬の1日100mgでの使用時と同等の血中濃度(定常状態)を示すため、内服薬や坐薬と同様の消化管障害、腎機能障害、肝機能障害などの危険が高まります。一方で、消化管を通過しないことで、嘔気(おうき)、嘔吐(おうと)などの副作用は軽減されます。今回の症例のように、控えめの使用量でも血圧低下という全身性の副作用にも注意が必要です。
がん性疼痛(とうつう)以外では2枚までとなっている1日の上限量を守るよう、患者への指導が重要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1824号 2025年3月3日号)
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