診察室から 診察室で前向きな声かけを
専門研修を終え当院に戻り、もうすぐ4年目を迎えます。慌ただしく過ぎる当院の日々ではありますが、かかりつけ患者の成長をいっしょに見届ける診療が、自分に合っているなとしみじみと感じています。産休・育休も経験した子育ての喜び・大変さも身にしみ、少し保護者の気持ちもわかるようになったかなというこの頃です。
新型コロナにインフルエンザにマイコプラズマ、その他さまざまなウイルスの流行によって、子どもたちはこの5年間で何度も鼻に棒を突っ込まれ、小児科で怖いことランキングに、注射だけでなく棒の検査もランクイン。実際、診察室に鼻と口を抑えながら入ってくる子の多いこと。「今日は注射しない?」「今日はお鼻ぐりぐりしない?」が第一声です。
そんな恐怖の診察室で、少しでもスムーズに診察がすすむように意識している声かけについてお話しします。ポイントはシンプルで、(1)肯定文を使う、(2)してほしいことを言う、の2点です。(1)は「注射しないと家に帰れないよ」と「注射したら家に帰れるよ」、「検査がんばらないとおやつ食べられないよ」と「検査早く終わらせておやつ食べておいで」、言われるならどちらがいいですか? 肯定文を意識して使い始めると、人の話し言葉のなかに二重否定文が多いことに気づきます。
(2)では、「動かないで」「走らないで」ではなく、「じっとしとくよ」「〇秒だけそのままね」「歩いてね」という言い方を意識します。「動かないで」と言われたら、じゃあ何をすればいいのか、してほしいことを短い言葉で伝えるようにしています。最初は子育てのなかに取り入れ、診察室でもやってみようと思ったのが始まりです。始めた時はどのような言い回しがいいか、考えるので頭を使いますが、慣れてくると自然と使えるようになります。
…と、きれいなことをのべていますが、次の目標は余裕のない子育て時も同じような言葉遣いをできるようになること。まだまだ道のりは長いです…。(島田栞(しおり)、香川・へいわこどもクリニック)
(民医連新聞 第1824号 2025年3月3日号)
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