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民医連新聞

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「マイナ保険証」でトラブル続出 「紙の保険証」の存続を

 政府は昨年12月2日、健康保険証の新規発行を停止。日本に住民票のある全員に対し、受診時にマイナンバーカードによる保険資格確認を求めています。「カンタン! 便利!」の宣伝とは逆に、現場ではトラブルが多発。全日本民医連が加盟事業所を対象に行ったトラブル調査(昨年11月25日~今年1月16日)には、患者・家族の不安の声を含め、合計250件以上の報告がありました。(多田重正記者)

「暗証番号は忘れた」
「顔認証できない」

 マイナンバーカードによる保険資格確認では、まず、医療機関の受付でリーダーにカードをセット。続いて、顔または暗証番号による認証を求められますが「暗証番号を覚えていない」患者が多く、「何度やっても顔認証されない」(福井)などの例が多発。
 しかも顔認証では、顔をリーダーの画面に表示された枠内におさまるように向けなければなりませんが、体調が悪い、障害があるなど、医療・介護が必要な人ほど困難です。「車いすの人や、急患で意識のない人がマイナ保険証しか持っていなかったらどうしたらいいんだろう」と話すのは、大井協同診療所(埼玉)の森山理恵さん(事務)。
 マイナンバーカードによる認証は本人が行う必要があることから「発熱外来のため、院外で対応した患者がマイナ保険証しか持っておらず、保険資格が確認できなかったため自費扱いになった」(宮城)例がありました。「母が認知症でカードを預かっている。受診時に持たせないといけないでしょうか」(鳥取)など、不安の声も寄せられています。

「わかりにくい」
「面倒くさい」の声が

 顔(暗証番号)による認証の次は、薬剤情報や健診情報などの提供に同意するかとの問いが現れ、画面を操作することになりますが、高齢者を中心に「わかりにくい」「面倒くさい」との声が全国から寄せられています。
 「これまで紙の保険証を受付に出すだけですんだのに。誰が便利なんだろう」と森山さん。「資格確認に時間もかかる。メリットはそこまで感じない」と同診療所の糸井祥太さん(事務)も応じます。薬剤情報も診療報酬明細書(※1)確定後に反映され、最大1カ月半ほどかかります。健診情報も健診事業者の請求後に反映される上、健康保険の健診(特定健診)などに限られます。

「名前の一部が●に」
「公費が未対応」

 問題はまだあります。
 第一に、リーダーの操作が終わっても氏名に常用漢字ではない字が使われている場合などに「●」が表示されることが。結局、新患の場合は本人が記入した診療申込書などで確認し、受診歴のある患者はカルテなどで確認することになります。
 第二に、子ども医療費、重度心身障害者、ひとり親など、自治体独自の公費受給者証はまだ資格確認に対応していない、との報告が。これも「紙の受給者証を見せてもらって確認しています。資格確認システムの提供会社には、『対応は3月から』と言われました」と森山さん。政府が「マイナ保険証一本化」を急いだ結果、医療現場が置きざりにされた形です。
 第三に、生活保護利用者に関する報告も。大井協同診療所では、新規保険証の発行停止で「これからはマイナンバーカードによる資格確認になるから」と、隣接するA市から「生活保護の医療券は発行しないことにした」と連絡が来ました。しかし「マイナ保険証」の利用は任意のはず。森山さんは「生活保護利用者を全員マイナ保険証にするのはおかしい」と憤ります。

資格情報が切り替わっていない

 第四に、資格情報が正しいとは限らない問題。「12月1日付で社保↓国保に切り替えたが、マイナ保険証のデータは社保のまま。本人が申し出て、紙の保険証で確認」(埼玉)、「9月まで国保、10月から協会けんぽになった患者がマイナ保険証を利用したが、資格情報が国保のまま」(長野)などの例が。「名前の読み仮名が違う」(山口)例もありました。

メンテナンスや動作不良で確認不可

 第五に、機器の動作不良、再起動、メンテナンス中などのときに受付できなくなる問題です。
 「昨年12月28日は、機器が予定されていたメンテナンスの日で使えませんでした」と森山さん。メンテナンスはオンラインで行われ、「マイナ保険証」のシステム全体が止まり、「カードによる資格確認がまったくできなかった」と糸井さん。当日は健診の受診者が一人、マイナ保険証を持って来ただけでしたが、感染症が拡大した時期。糸井さんは「『マイナ保険証しか持っていない新患の人が来たらどうしよう』と職員で話していた」とふり返ります。

カードリーダー交換のケースも

 さらに、「接続が悪く、頻繁に処理中になって保険証確認が滞る」(山梨)、「新患の人がマイナンバーカードで資格確認をしたら、保険証原本と異なる情報が表示された。初診日は保険証の原本で登録したが、再診時にマイナ保険証で資格確認をしたため、誤った資格情報が上書きされた」(京都)、「医療費の自己負担割合が違うことがある」(福岡)、「マイナタッチ(カードリーダー)が正常に起動しない。メーカーの担当者と連絡が取れ、いろいろと確認したが、最終的に新しいマイナタッチを送ってくれることになった」(沖縄)など、トラブルは尽きません。
 糸井さんは「マイナンバーカードの電子証明書(※2)の期限切れで認証できなかったり、磁気不良なのか、そもそもカードが読み取れない人もいた」と言います。
 「マイナンバーカードが読み取れないときのために」と「資格情報のお知らせ」も発行されますが、「結局2枚持たないといけない。電子証明書も更新しなければならず面倒だ」(福島)との声も。

なぜトラブルが多発するのか

 なぜ、トラブルが多いのか。「マイナンバーカードによる保険資格確認一本化は、患者・利用者の便利さが目的ではありません。そもそもの出発点が違うからでは」と指摘するのは、医療生協さいたまの久保田直生さん(事務)。
 マイナンバー制度は2015年10月から運用が始まり、カードは、2016年1月から発行されるようになりました。同制度の目的のひとつが、個人を特定した形での社会保障の給付抑制と負担増です。実際に、2015年に閣議決定された「骨太の方針」は「医療保険、介護保険ともに、マイナンバーを活用すること等により、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める」仕組みを「検討する」とのべています。背景には大企業の税・社会保障負担を減らし、国民に負担を求める財界の思惑が。経団連は、昨年12月にも「公平・公正な制度の基盤」として「マイナンバーと所得・資産(銀行口座等)の紐(ひも)づけの義務化」を主張しています(『FUTURE DESIGN2040』)。
 もうひとつの目的は、個人情報を集め、民間企業がもうけのために活用できる仕組みをつくることです。「いよいよ始まるマイナンバー制度」と題した座談会で、経団連の中西宏明副会長(当時)が「情報産業の立場から見ると、国民一人ひとりを正確に特定できるという意味でマイナンバーは非常に強力なツールであり、さまざまな活用法が想像できます」(『月刊経団連』2015年6月号)と。「●の問題も、政府は事前に把握していましたが『仕様だ』と開き直った。国民の便利さより『マイナ保険証』を優先した結果」と久保田さん。
 「マイナ保険証一本化」は、あらゆる個人情報を「一本化」する入り口。将来的に国が国民の言論や行動を監視、統制することに利用される危険も指摘されています。

従来の保険証
発行させる運動を

 マイナンバーカードによるなりすましや個人情報の漏えいの可能性など「知れば知るほど危険だと思うようになった」と久保田さんは言います。医療生協の支部や市民団体の学習会で「マイナ保険証」問題の講師を務めますが、「不便で危険なのが『マイナ保険証』。利用は任意ですが、私はやめた方がいいと訴えています」と断言します。
 「学習会では『薬局の機械でなかば強引にカードに保険証をひもづけされた。解除したい』という声もあった」と久保田さん。厚生労働省によれば、解除申請は10月28日の受付開始以降、12月末までに全国で4万5214件にものぼります。「マイナ保険証押し付けに反対する私たちの運動で、当初1年とされた『資格確認書』の期限が5年になりました。従来の紙の保険証を発行させるたたかいが大事です」と久保田さんは強調しました。


※1 公的健康保険制度にもとづいた医療行為への支払いである診療報酬を患者ごと、ひと月ごとに計算し、支払基金(国保は国保連合会)に提出する請求明細書
※2 マイナンバーカードのICチップに搭載された個人証明書。マイナンバーカードの期限は10年だが、電子証明書は5年


保険証とりあげの実態も

 マイナンバーカードによる受診しかできなくなるような宣伝を国が主導したため、全国で「これまでの保険証は使えるのか」との不安の声が寄せられた。実際には期限が来るまで、最長1年間使用可能だが、「会社に保険証を回収された」(北海道)例が。保険料滞納で短期保険証となっていた患者が行政に「マイナ保険証になるから保険証は出せない」と言われ、受診を中断した例(山梨)も。有効期限が表示されないため、国保が通常の保険証か、短期保険証かわからないことを指摘する報告(石川)も寄せられている。

(民医連新聞 第1822号 2025年2月3日号)

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