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民医連新聞

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連載 いまそこにあるケア 第20回 ヤングケアラー支援で医療従事者ができること 文:斎藤真緒

 医療従事者は、どのようにしてヤングケアラーをささえることができるでしょうか。
 家庭でのケアの状況は外からは見えにくく、ヤングケアラーを発見しづらいことが、支援の課題の一つとして指摘されています。政府は、「多機関多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」を2022年に作成しました。そこでは、学校での発見が重視されていますが、学校での子どもたちの様子からだけでは、家庭での生活の様子までは十分把握できません。
 他方、介護や障害、医療といった、家族のケアに直接かかわりをもつ支援機関は、ケアを必要とする人とのかかわりを通じて、ケアの状況を具体的に把握できる強みがあります。福祉や医療の現場も、ヤングケアラーを発見する役割を期待されています。
 医療従事者が最初に接するのは、多くの場合、患者でしょう。家族はケアの担い手とみなされがちですが、患者とかかわるなかで、背後の家族に目を向けることが、ケアラー支援の第一歩になります。家族が病気や障害を抱えることで、家族の生活はどう変化するか、患者の日常生活を主にささえるのは誰になりそうか、同居家族に子ども・若者がいるかなど、まずは家族にかかわる情報収集が大切です。
 「家族思いのいい子ね」「えらいね」「若くて元気なあなたが家族をささえてあげて」などの言葉が、依然として支援者から聞かれることがあります。家族を人的資源とみなさず、ケアラーの気持ちや生活の変化にも寄り添う姿勢が求められます。
 ケアラー自身も、自己犠牲を自明視していることがあります。NHKの調査によれば、介護殺人は介護が始まってから1年以内にもっとも多く発生しています。ケアの発生による家族生活の激変を最低限にとどめる初動期の対応が決定的に重要です。
 政府の全国調査では、親をケアする小学6年生のうち、親になぜケアが必要なのか「わからない」と回答した子どもがもっとも多く、33%を占めます。子どもたちが、親の病気や障害を正しく理解できないと、例えば「お父さんお母さんが私を気にかけてくれないのは、私のことが好きじゃないからだ」といった、誤解が発生します。子どもたちがわかる言葉で病気や障害のことをきちんと伝えることも、医療従事者の重要な役割と言えるでしょう。


さいとう・まお:立命館大学産業社会学部教授/子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト発起人

(民医連新聞 第1822号 2025年2月3日号)