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民医連新聞

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連載 いまそこにあるケア 第18回 若者ケアラーのキャリア支援を考える 文:古谷友亮

 子ども期・若者期は、人生の基礎となる大きな選択の連続です。中学校から高校への進学、高校から高等教育機関、もしくは就職へ。その過程で実家を離れるのか、そして人生をともに歩むパートナーを持つのか、子どもを持つのかなど、時間の経過とともに将来も視野に入れた多くの選択を迫られる重要な時期です。
 これは、家族の世話や介護を担っているヤングケアラーにおいても同様です。ただ、ケアを担っていない子ども・若者と異なるのは「日常的にケアを行いながら」、また「今後の家族のケアをどうするのか」などの点を考えなければならないことです。国による実態調査などで、これらのキャリア選択の際に、複雑な葛藤があることが明らかになっています。
 日本総合研究所による大学3年生が対象の実態調査(2022年)では、世話をしている家族が「現在いる」と答えた学生が6.2%(「現在はいないが過去にいた」4%)となりました。「世話をしていることで今後不安なこと、やりたいけどできなさそうなこと」は何か、という設問では、「自分の時間が取れない」20.1%、「一人暮らしがで
きるか不安がある」15.9%、「恋愛・結婚に対する不安がある」
14.4%、「希望する就職先・進路の変更を考えざるを得ない」13.6%。その他に、睡眠の不十分や友人との時間、学業面での不安などがあげられました。ケアゆえに、将来の生活設計について、実家からの距離や働き方で制約を受けざるを得ない実態や、子どもという新たなケアへの挑戦へのためらいなどが読み取れます。
 そこで、各ライフステージに合わせた「キャリア支援」という枠組みが重要になります。ケアラー自身の職業・キャリアについての希望に焦点を当てた、一般的な「狭義のキャリア支援」だけでなく、ケアの受け手への支援の見直しを含む、家族生活全体を射程に入れた「広義のキャリア支援」が必要になります。将来を見据えた就職活動で求められるのは、学生時代に力を入れたこと、いわゆる「ガクチカ」です。ですが、多くのケアラーは自分に時間を使うことができないため、自己PRが難しくなります。ケアラーが、「ガクチカ」などに費やす時間や機会を確保するだけでなく、企業の側が、ケアを通じて培ったケアラーの強みを引き出せるように、採用の物差しを見直すことも必要だと思います。


ふるやゆうすけ:子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト事務局/立命館大学社会学博士前期課程

(民医連新聞 第1820号 2025年1月6日号)