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民医連新聞

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相談室日誌 連載573 生活保護利用で救護施設へ 自発性引き出す支援の困難事例(山形)

 Aさんは50代後半の男性。生まれてすぐAさんを引き取った養父母が数年前に亡くなり、独居生活でした。15年前に糖尿病で通院治療していましたが、自己都合で数年間治療を中断。2年前に自宅の除雪作業中に左足を負傷、壊疽(えそ)した左足首を切断し、介護職を1年間休職の後に退職しました。求職活動中に体調不良となり、自身で救急車を要請し敗血症で入院。感染源は胆嚢(たんのう)炎に加え、左下肢の排膿が原因と考えられました。左大腿部の半分を切断、リハビリ目的で当院へ転院しました。
 当初Aさんは申請中の傷病手当金が入り次第入院費を支払うと話し、経済的困窮の言及はなくリハビリは順調に経過。退院に向け自宅訪問を実施したところ、自宅は汚れて異臭がひどい、ゴミ屋敷状態でした。多職種で自宅清掃を検討していた矢先、Aさんから「自宅の水道管が破裂しているが修理するお金がない。電気も止められている」との話がありました。修繕費用の捻出を検討するため家計整理を行うと、親の介護のためのリフォームで負った多額の住宅ローンの返済が長期間滞っていることが発覚。また傷病手当金の手続きは行われておらず、所持金は10万円を切っていました。Aさんと年金事務所に障害者年金の受給を相談しながら、生活保護申請もすすめることになりました。しかし、住宅ローンを理由に受給決定には至らず、面談で自宅を手放さなければならない可能性を説明しました。本人はどこか他人事のような反応ばかりで、自己破産をするかどうかの結論も出ないまま時間が経過。郵便物を整理中、ローンの滞納のため自宅は差し押さえの手続きがされていたことが判明。最終的に再度生活保護申請を行い、受給決定となり救護施設へ入所しました。
 Aさんは自宅退院を希望するも、生活費の工面も終始相談員任せで、自らアクションを起こす意識は希薄でした。SWとしては本人の経済的支援に、本人の意思が反映できていない状態が続きました。患者支援では、本人のプライドを傷つけないかかわり方が必要ですが、自分の課題に問題意識が薄いことで生活上の課題が埋没してしまったケースでした。本人が自発的に課題に向き合う支援の難しさを実感しました。

(民医連新聞 第1819号 2024年12月2日・16日合併号)

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