第16回 看護介護活動研究交流集会in熊本 全国から454演題の報告が
第16回看護介護活動研究交流集会では1日目と2日目、いずれも午前に9会場に分かれ、分科会とポスターセッションを行いました。29テーマに485演題の応募があり、うち454演題が報告されました。一部を紹介します。
分科会
■多職種で連携し
1日目A2会場は「多職種連携」をテーマに16演題。沖縄・大田さつえさん(助産師)は、著明な筋力低下、体調不良、う歯、セルフケア不足などを抱える特定妊婦に出産前から助産師、理学療法士、歯科衛生士、栄養士などがかかわった事例を報告しました。
岡山・曽根早苗さん(看護師)は、入院治療を拒否する糖尿病患者に関するとりくみ。SDHカンファレンスを実施し、医師、調剤薬局との連携で定期通院を月1回から週1回に変更。朝夕の内服を朝に変更し薬袋に日付を印字。通院時に残薬を持参してもらい、看護師が自宅訪問し家庭環境を把握するなどし、HbA1cが10以上から7・1まで改善しました。
■意思を尊重した最期を
1日目A4会場は「エンドオブライフケア」をテーマに16演題。本人の意思や家族の思いをどう引き出し尊重するか、多職種で最期をささえた事例報告が続きました。鹿児島・大園直行さん(介護支援専門員)は、80代女性の事例で、困窮するなか生活保護利用を拒み、玄米茶にすがる夫も支援。社会背景にも着目しました。
在宅看取りが増えるなか、ケアする側の不安を安心や成長につなげるとりくみも。東京・伊藤直美さん(看護師)は、透析中止と帰宅を切望する70代患者の退院を支援。多職種デスカンファレンスで「在宅看取りに立ち会えなくても入院中の看護に自信を持てた」と語りました。熊本・くわみず病院は特養の介護職に看取りへの意識調査を実施。不安を分析し、学習提案の必要性を指摘しました。
■その人らしい認知症ケア
2日目A1会場は「認知症ケア」をテーマに14演題。東京・藤田雄嗣さん(介護福祉士)は、入浴を拒否する101歳利用者に事業所独自の「人となりシート」を使用。101年の歴史を知ることから始め、自尊心に寄り添ったケアで気持ちを動かしました。
北海道・樋口芽衣さん(介護福祉士)は、BPSDで職員に危害を加えるリスクがある利用者に対し、チームカンファレンスをくり返し、主治医との細かな情報共有で薬剤変更を続けた事例を紹介。現在は心理的に落ち着いた生活が送れるようになっています。
福岡・高田諒子さん(看護師)は、アルツハイマー型認知症の80代女性を多職種で支援。患者の得意なことをするスケジュールを組むことで、ミニメンタルステート検査が、入院時12点から7点になりました。
■職員を知る職場づくり
2日目A4会場は「入退院支援」「職場づくり」「職員の健康を守る」の各テーマで計14演題。「リハビリ病棟で自宅退院へとりくんだ介護福祉士のかかわり」(青森・健生病院)、「心理的安全性をスタッフとともに学んで」(東京・みさと健和クリニック)などの報告がありました。
大阪・耳原鳳クリニックでは、職員を知り理解するために、「自己紹介新聞」を月1回発行。その認知度は職員の9割以上、6割が毎月読み、5割が新しい職員を知るきっかけになっていました。人柄や個人に触れることで、職員同士の会話の機会に発展しています。
ポスターセッション
「食べる支援・口腔ケア」は10演題。宮崎生協病院では、母の「食べること、しゃべること」の復活を願う長女をささえ、多職種連携。嚥下(えんげ)訓練での情報共有や統一したケアの実践で、経口の食事が可能になりました。
「健康の社会的決定要因」は6演題。東京・志茂しず江さん(看護師)はコロナ禍で増えたアルコール依存症患者を調査分析。コロナ離職、都市での孤立が浮き彫りになりました。
「業務改善・質の向上・交代制勤務」は25演題。埼玉・秩父生協病院の療養病棟では、床頭台を整理し、ベッド周りのコードをフックにかけ、患者が置きたくなるように酸素ボンベの定位置に印をつけました。東京・特養葛飾やすらぎの郷の排せつ委員会では、パッドを尿の吸収力が高いものにして交換頻度を減らし、入浴や水分摂取介助の時間を増やしました。
(民医連新聞 第1818号 2024年11月18日号)