副作用モニター情報〈627〉 ホスラブコナゾールによる肝障害
爪白癬(はくせん)治療の内服薬は、1997年のラミシール錠発売と1999年のイトリゾールカプセル(パルス療法)効能追加以降、約20年間大きな進展がありませんでした。しかし、2018年5月にトリアゾール系抗真菌薬ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(以下、ホスラブコナゾール、製品名:ネイリン®カプセル)が薬価収載され、新たな選択肢が登場しました。
ホスラブコナゾールは、1日1回1カプセルを12週間服用という、服薬負担の少なさと短い内服期間が特徴です。加えて、薬物相互作用を引き起こす可能性が低く、食事の影響も受けにくいという利点があります。
今回はホスラブコナゾールによる肝障害の症例を報告します。
症例)70代男性
1日目:爪白癬治療にホスラブコナゾール100mg開始(開始前、開始日の検査値不明)
63日目(中止日):体調不良を自覚し、服用を自己中止
中止14日目:体調改善せず受診、血液検査で肝障害を認めた
中止29日目:改善傾向
中止154日目:肝機能検査値改善
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ホスラブコナゾールによる肝障害は、投与開始後4~8週に多く報告されています。国内第III相臨床試験では、安全性解析対象症例の約17%に肝機能検査値異常が認められました。そのなかでγ-GTP増加がもっとも多く、AST、ALT増加も報告されています。市販後調査では、1259例の肝機能関連の副作用が報告されており、そのうち85例が重篤な症例でした。
副作用発現後、多くの場合は投与が中止され、大半の症例で回復または軽快しています。ただし、回復または軽快までに1~3カ月程度を要する症例が多く確認されています。
早期発見のためには、投与開始後4~8週の時点で血液検査を実施することが重要です。加えて、患者および家族に肝障害の自覚症状を説明し、症状発現時の適切な対応方法を事前に指導することが不可欠です。(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1818号 2024年11月18日号)
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