連載 いまそこにあるケア 第16回 「家族丸ごと支援」の多機関多職種連携 文:武石卓也
ヤングケアラー支援においては、「ケアを家族だけで抱えこませない」という視点が欠かせません。そのためには、教育機関、福祉だけではなく、多機関がかかわっていくことが重要です。
ヤングケアラー(以下、ケアラー)と聞くと、児童福祉の問題として捉えられがちですが、高齢福祉、障害福祉など複数の領域の支援者がアンテナをはることで、早期発見・把握につながり、ケアラー本人とその家族への有効な支援が届きやすくなります。
家族のなかで重要なケア役割を担っているケアラーは、簡単にケアをやめるという選択ができません。なぜなら、ケアをやめると、その分の負担を他の家族が引き受けることになるからです。家族のことを考え、ケアをやめることに「罪悪感」を抱くケアラーは少なくありませんが、ケアの継続は、進路選択や就職に影響します。
「夢の実現」と「家族のケア」がいわばトレードオフの関係にあるケアラーにとっては、支援者がどれだけ「ケアより自分を優先していいんだよ」と言っても、家族のケアをどうしたらいいのか、見通しが立たない不安のなかでは、葛藤を抱えることになり、余計につらくなるかもしれません。
ケアラーが自分自身を中心に据えた人生設計をしていくための支援はとても大切ですが、そのためには、本人がケアをしている家族のこともセットで考える必要があります。
ケアラーが誰をケアしているのかを、その都度、関係機関が連携し、情報を共有しながら家族全体のニーズを把握していき、ケアラー本人とその家族に必要な支援を届けていく「家族丸ごと支援」がとても重要になります。多機関が連携し合うことで、今すでに利用しているサービスは何か、そこにどのようなサービスが加われば、ケアラーがケアから距離をとり、自分中心の人生へと踏み出せるのかを考え、調整することができます。
多機関の横のつながりをすすめていくための専門職として、「ヤングケアラー・コーディネーター」を配置する自治体が増えてきています。こうしたヤングケアラー・コーディネーターやスクールソーシャルワーカーを中心に、家族丸ごと支援の枠組みで多機関多職種連携をすすめ、ケアをする人もケアが必要な人も安心して生活できるための支援が求められています。
たけいしたくや:立命館大学人間科学研究所補助研究員/子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト発起人
(民医連新聞 第1818号 2024年11月18日号)