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民医連新聞

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介護保険料引き下げた 余剰金明らかにし各団体と協力 滋賀民医連も参加する大津社保協

 滋賀民医連も参加する、滋賀・大津社会保障協議会(以下、大津社保協)の運動で、大津市の介護保険料を、1割引き下げました。大津市の状況と、介護保険第8~9期に、どのような運動が展開されたのか、取材しました。(松本宣行記者)

人材確保では一定の成果

 「介護に関する運動の大きな目標は、人材確保と保険料引き下げの2点。人材確保は、2021年に大津市に介護人材確保対策室が設置され、就職支援金などの給付が始まった。人材確保は、十分とは言えないが、成果が出た」と藤岡孝之さん(滋賀勤労者保健会・専務理事)は言います。
 もうひとつの目標である、介護保険料引き下げが可能か、大津社保協で大津市の介護保険行政に関する学習会を重ね、研究しました。

ため込まれた55億円

 介護保険料として納められたお金が、大津市に55億円もため込まれていることがわかりました。このお金をどうするのか。さまざまな方法で大津市に働きかけました。
 大津市の介護保険事業の第1~8期基金の推移を見ていくと、特に6~8期で急増していることがわかります(図)
 大津市は5期に取り崩しを行いました。その後、介護保険積立基金の余剰金は、第6期(2013~2017年)から右肩上がりに増え続けます。第8期(2021~2023年)になると、基金は55億円に積み上がっていました。大津市政の介護保険事業の財政規模は約300億円です。介護保険財政の18%超にあたる、55億円の余剰金は多すぎます。それにこのお金は、介護保険のために集めた、目的がはっきりしたお金です。

横断的運動を展開

 第9期(2024~2027年)の計画に対するパブリックコメントでは、大津社保協と個人でコメントをしました。
 「パブリックコメントは要望ではなく、計画に対する改善意見を具体的に書くように心がけた」と藤岡さんは語ります。
 滋賀県生活と健康を守る会連合会も、審査請求の運動を展開。大津市の請求者数は、119人にのぼります。
 大津社保協の会議には、大津市議会議員も参加しており、基金の余剰金について、議会での質問も行われました。
 「老人クラブ連合会などへの働きかけや、保守系の議員などにも働きかけて、合意してもらったことも大きかった」と、藤岡さんはふり返ります。

市長選で公約に

 このような流れのなか、現市長は2期目の選挙で「介護保険料1割引き下げ」を公約に掲げ当選。基金から37億円を取り崩し、保険料負担の軽減を実現しました。
 藤岡さんは、「市民の暮らしを守るため、事実を明らかにし、各団体と横断的に協力することで、実現できた。大津市を特殊な事例にするのではなく、各市町村で基金がどれだけ残っているかなどを調べて、全国でとりくんでもらえれば」と語ります。法人理事長で大津社保協世話人の今村浩さんは「事業所には介護報酬をまともに払わず、住民から介護保険料を高く取ってため込んでいる。この詐欺行為を暴いたのがよかった」とふり返ります。また、ぜぜ健康友の会事務局の池内好子さんは「下がったとはいえ、まだ高い。負担はできるだけ抑えてほしい」と。

たたかいは終わらない

 2024年介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。大津社保協は、訪問介護アンケートを実施。結果を受けて、さらに基金の余剰金を活用して赤字となった訪問介護事業所の減収補てんにあてるよう、10月11日、市と懇談を行い、たたかい続けています。

(民医連新聞 第1817号 2024年11月4日号)

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