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民医連新聞

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診察室から 背景つかみ健康寿命伸ばす秘訣

 「目の前にいるのは血糖コントロールの悪い患者のAさんではなく、〇〇株式会社のA部長さんでもあるということも忘れていてはいけない」。二十数年前に糖尿病関連の講演会で聞いた、とても印象深く残っている教えです。
 患者中心の医療を行う上で患者の全体像を把握するのは大事な要素であり、普段の診療でもなるべく気にかけています。さらに家族構成や親兄弟も含めて把握するようにして、電子カルテに記録しています。慣れてくると結構面白いもので、意外な兄弟関係や職場の元同僚なんて関係が見つかることもままあります。比較的狭い診療圏ならではかもしれません。
 私は診療圏内に住んで十数年、買い物の際に患者に会うこともあります。その時は「血圧が高いBさん」ではなく、「今春に長男が大学に進学したBさん」として接するよう心がけていますが、完璧に覚えていられるはずもなく、自分の脳の退化を実感します。
 不意に「患者から見た私は何者なんだろう?」と心配になりました。医師の肩書きがない時の自分がつまらない人間だとすれば、それは医師としても魅力がないのでは? と不安になったのです。
 定年後の男性は家に引きこもりやすい、家に居場所がなくなる、風呂で一人で泣いている、など定年後・男性をネットで検索すると悲しくなるような結果が多数出てきます。地域のコミュニティーに参加していれば、そこまで悲しい老後にはならないかもしれません。趣味があれば何とかなりそうです。ただ、多くの人は時間がないのが現実ではないでしょうか。
 健康寿命を伸ばす、と言いながら、働く我われが不健康な老後にすすんでいては良くありません。地域のコミュニティーに参加したり、趣味の時間が持てるくらいの労働環境をめざしましょう。「今日は△△サークルがあるので定時に帰ります」と、堂々と言える職場にしていきましょう。私も今日はTuba (金管楽器)の練習をするので定時に帰ります。みなさんも趣味の時間を持ちましょう。
(舟戸督力(まさかつ)、愛媛・伊予診療所)

(民医連新聞 第1817号 2024年11月4日号)

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