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民医連新聞

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副作用モニター情報〈625〉 バルプロ酸ナトリウムによる高アンモニア血症

 今回は、バルプロ酸ナトリウムによる高アンモニア血症の症例を紹介します。

症例)60代男性
既往歴:症候性てんかん、脳梗塞後遺症、慢性肝障害など
併用薬:フェノバルビタール、アレビアチン、バイアスピリンなど
1日目:症候性てんかんに対しバルプロ酸ナトリウム(VPA)徐放錠1回400mg1日3回服用
17日目:AST・ALT値上昇、ウイルス性・自己免疫性は否定的。BCAA製剤、リフキシマ錠開始、VPA濃度:50μg/mL(基準値:50~100μg/mL)と基準値内であった
28日目:AST・ALT値は改善したもののアンモニア値は上昇
38日目:VPAによるカルニチン欠乏を原因とした高アンモニア血症が疑われたため、レボカルニチン1回250mg1日3回開始
50日目:アンモニア値改善傾向
51日目:退院

* * *

 VPAによる高アンモニア血症の発症機序として、VPAとその代謝産物が尿素サイクルを障害し、カルニチンの生合成を阻害することが考えられています。高アンモニア血症の発見までの期間は数カ月から10年以上におよび、症状も昏睡や意識障害から無症状に至るまで症例によって大きく異なります。高アンモニア血症や脳症が見られた場合の対応として、(1)VPAの中止または減量、(2)VPAの中止または減量とカルニチン製剤の併用、(3)VPAの継続とカルニチン製剤の併用、の3つの選択肢による治療例が報告されています。本症例では、VPAを継続しつつカルニチン製剤を併用した結果、アンモニア値が改善しました。
 また、てんかん患者における高アンモニア血症のリスク因子には、VPAの高用量投与、フェニトインやフェノバルビタールの併用、若年者などが挙げられています。
 VPAによる高アンモニア血症は重大な副作用の1つです。早期に発見し対応するため、VPA服用中は定期的なアンモニア値の測定が推奨されます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1816号 2024年10月21日号)

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