診察室から 「隣の診察室も○○」と医師増員求め
医師の診療活動を生涯続けていくには、喜びとやりがいと同時に、さまざまな苦悩も抱えることになります。その苦悩はいつか解決し(「明けない夜はない」と言い聞かせて)、自身や組織の成長の糧となることを心のささえや励みにしていきます。しかし、いつもまい進しているとは言えず、時に立ち止まり、安易な選択をしてしまうこと(魔が差す瞬間)もあります。そんな時に正道に引き戻してくれる、上司の存在(顔が思い浮かぶ)と踏みとどまらせる格言が、自分にはあります。
後者の格言とは、例えば「これも仕事のうち」は、多くの社会人が唱えていますよね。民医連職員の格言としては「お金の切れ目が命の切れ目であってはならない」「あれこれ悩まず、まず診よう」など、歴代の先輩医師や職員から受け継がれ、今では自分の言葉になっています。研修医には「研修医は足で稼ぐ」「手が震えるのは真剣な証拠」「選択に迷ったら、安全な方を選ぶ(上司に怒られようとも、時間がかかろうとも、検査が多くなったとしても)」と伝えています。これも自分が研修医時代に指導医から教えられたものです。これらの格言はいつまでも心に残り、自身を奮い立たせ、規範を示す存在となっています。
しかし、うろ覚えの格言もあります。学生時代にある先輩から言われたもので、「隣の診察室も◯◯(良くする、心配りする、だったような)」から始まるもので、要は自分の目の前の患者の診療だけではなく、隣の診察室、隣の病院や隣の県、すなわち全体の医療活動、さらにはそれを規定する行政までも改善していくために、働きかけ・協力していくことの視点・重要性を説いた格言でした。
今秋より、医師増員を求める署名を、研修医や医学生へ呼びかけ始め、呼びかけの冒頭に「隣の診察室も◯◯」を引用しています。学生時代の自分が琴線に触れたように、今の若手の心に残るよう文言を推敲(すいこう)しています。多くの対話や活動経験の後に、それは形づくられていくものと思います。(鈴木健太郎、島根・松江生協病院)
(民医連新聞 第1816号 2024年10月21日号)