相談室日誌 連載569 認知症と知的障害の家族 虐待事例で思うこと(富山)
Aさんは80代女性で認知症あり。腕にあざができていると連絡があり、利用中のデイサービスまで、事実確認に行ったのは昨年の夏。私が包括支援センターに異動になって、初めての虐待対応でした。
Aさんは要介護2で、知的障害のある娘(50代後半)との二人ぐらしです。3年ほど前から、何度か同じような連絡があったようです。「娘さんに、嫌なことされてない?」と聞いても、「娘はよくしてくれている」と言います。しかし話を続けているうちに「姉が来て嫌なことをする」と言い、それが「姉」になったり「一番上の子」になったり。また、娘の顔がわからなくなることもあるという話でした。
娘はB型就労事務所で働き、買い物や調理などの家事を担っています。家のなかは掃除が行き届いておらず、ほこりだらけの室内に物があふれ、小さなこたつテーブルの右と左に布団を敷いて寝ている状態です。娘は「私はたたいたりしていない」と言いますが、薬の管理や外出の準備などの際にきつい言い方をしていました。そうしたなかで、腕を少し強く握った時に内出血したのではないかと思われました。この時は虐待にはあたらないとの結論でした。
Aさんは認知症以外に、不安神経症もあるため、家の様子や持ち物が変わるとパニックになることがあります。担当ケアマネジャーや娘の事業所の相談員といっしょに部屋の掃除と模様替えをしたこともありました。年末はデイサービスが休みになるため、ショートステイの利用を勧めることになりましたが、以前利用した時のことを思い出すのか、かたくなに拒否。民生委員や近所の人の見守りもあり、正月は何事もなく乗り越えることができました。その後も腕や背中にあざができている連絡があるたびに、情報を共有して対応しています。
この家族のように、障害のある子が認知症になった親を介護しながら生活を送っているような家庭はどれだけあるでしょうか。障害があることで、対応が遅れたり、ことが大きくなったりしているように思います。病院との連携や他事業所からの情報に敏感になり、住み慣れた地域のなかでくらしていくことができるように、これからもサポートしていきたいと思います。
(民医連新聞 第1815号 2024年10月7日号)
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