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民医連新聞

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こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (12)米パニックはなぜ

 6月以降、全国のスーパーなどから米が消える事態がひろがりました。しかし、農水省は対策をまったくとろうとしません。なぜ米パニックが起きたのでしょうか?
 昨年(2023年)産の米生産量は661万トンで、今年6月末の時点で前年の在庫分197万トンと合わせて合計858万トン供給できる量がありました。農水省は23~24年の需要量を702万トンと定め、24年6月末の在庫量は昨年より41万トンも少ない過去最低の156万トンでした。国民は1カ月に50万~60万トン近く消費するため、9月半ばにはその在庫を食べ尽くしてしまう数量です。
 こうした事態にもかかわらず、「新米が出回れば米不足は解消される」と農水省は対策をとりません。24年産の新米が出回るころには、古米在庫はゼロになり、新米は奪い合いに。米穀年度は11月から翌年の10月末までです。従って、本来であれば10月末まで在庫がなければなりません。9月からの新米をあてにするのは、来年食べる米を“先食い”しているだけです。政府が、この1年間の消費増を見誤り、需要を40万トン以上(702万トン-661万トン)も下回る減産を押し付けた結果、民間在庫が過去最低となり、米不足を招いたのです。
 こうした状況にもかかわらず農水省は、今年(24年)産米の生産量を669万トンと定め、在庫量156万トンと合わせて、前年より33万トンも低い825万トンの供給量としました。米の需要が大きく伸びているにもかかわらず、需要量は昨年より29万トンも少ない673万トンと見積もり、24年産の在庫量は過去最低の152万トンに。生産量の669万トンも今後の気象条件などでその通り収穫できるかどうかわかりません。来年も米不足は避けられない状況です。増産に舵(かじ)を切らなければ、来年も米不足を招くことは明らかです。
 政府はこの間、主食の需給と価格への責任を投げ捨てて、市場に丸投げ。一方、生産者に生産削減を押し付けてきました。その結果、離農が加速され、生産量が大きく減少しています。
 世界が食料不足のとき、食料自給率向上を投げ捨てる政治でいいのでしょうか。国民の食と暮らしを守るため、消費者と流通業者、生産者を支援する総合的な政策への転換が必要です。


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1815号 2024年10月7日号)

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