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民医連新聞

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こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (11)フードテック

 前回ふれた「国連食料システムサミット」(2021年)では農民不在のロボット農業と並んで、フードテックの問題が議論されました。
 フードテックとは、「フード」(食)と「テクノロジー」(技術)を組み合わせた造語で、食の問題に最新のテクノロジーを活用することです。推進側は、(1)世界人口の増加と食料危機、(2)生産性の向上と環境保護、(3)多様化する食への対応などをその目的としています。農水省「みどりの食料システム戦略」のなかでも、その推進がうたわれています。フードテックは次の技術が注目されています。
 (1)代替肉。大豆などの植物を原料にした、牛や豚、鶏などの動物性タンパク質に代わるもの。大豆ミート食品などの人工肉が開発され、環境問題に加えて、健康志向の高まりもあって、急速に普及しています。通常の加工食品と同じく、原料の多くは輸入大豆が使われ、遺伝子組み換えであり、風味や歯ごたえを食肉に近づけるために添加物が多用されています。(2)昆虫食。現在は主に昆虫そのものでなく、乾燥させ、粉末状にして、せんべいやクッキーなどに練り込んで食品化しています。もっとも多く用いられる昆虫はコオロギ、次いでバッタ、イナゴなどです。古来、イナゴや蜂の子などが伝統的な地域の食文化として定着し、貴重なタンパク源になってきました。しかし、伝統的に食べられてきたこととは別に、食品としての経験が浅く、アレルギーやアナフィラキシーなどを引き起こすことが懸念されています。特にコオロギは、成長を早め量産するために、ゲノム編集技術を用いた開発が行われています。(3)培養肉。工場で家畜などの細胞を培養してつくり出す技術です。牛や豚、魚などの細胞を培養して人工的に食肉化するもので、筋肉をはじめ、血管や血液、脂肪など複数の細胞を培養し、立体構造にしてつくります。食肉に近づけるために、他の食材や添加物を加えます。培養肉の最大の問題は、これまでまったく食品としての経験がない、新しい食品であり、安全性を十分に確認する必要があります。
 フードテックは、膨大なコストがかかり、環境面、生物多様性への影響も懸念されます。主にベンチャー企業が開発し、大手食品企業がその量産化をねらったもので、企業による最先端の技術を用いた食料の商品化、新たな食の支配につながります。


フードテックの代表格、コオロギせんべい、大豆ミート


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1813号 2024年9月2日号)

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