伝統の大掃除で私たちの病院をピカピカに 愛知・協立総合病院
6月15日、愛知・協立総合病院(名古屋市熱田区)では、総勢90人が年1回の「病院大掃除」を行いました。職員とみなと医療生協組合員、地元タクシー会社の従業員も加わり、院内にあるすべてのイスを磨き上げます。“協同”が光るとりくみの様子を紹介します。(丸山いぶき記者)
手づくり「プリンせっけん」
土曜の昼下がり、同院1階の一角には、大きな円陣になって大掃除の説明を聞く新入職員や、準備に奔走する組合員のみなさんの姿がありました。「はい、洗剤です」「ありがとうございます」と、タワシやバケツ、雑巾、そして手づくり廃油せっけん=通称「プリンせっけん」が手渡されると、いよいよ大掃除が始まりました。
院内各フロアへと散った新入職員は43人。3人一組で各所に設置されたイスを磨いて回ります。最上階の8階、名古屋で最初にできた緩和ケア病棟の一室で作業していた看護師3人は、「なんか黒いね」「私たち、いつもここでお昼ごはんを食べています」「黒いのが浮いてきた」。洗浄威力をみせる「プリンせっけん」が、毎年この日のために準備される組合員の手づくりで、水を汚さないと聞くと、「えー、すご!」「めっちゃ、きれいになる」。1階で掃除する研修医3人も、「ごはんが入っているらしい」と興味津々でした。
職員・利用者が同じ目線で
「毎年、新入職員が一生懸命やってくれる。さっきも若い男性が『手づくりせっけん、いいですね。つくり方教えてください!』ってね。タクシー運転手さんも慣れたもの」。ベテラン組合員の峰野康子さんは、うれしそうに語ります。今回は職員50人、組合員30人、タクシー会社から10人が参加。当日参加できない組合員からも、毎回たくさんの雑巾の寄付があります。「他の病院ではない、手づくりの大掃除。みんなの病院だと他の患者さんにもわかる、目に見える運動」と峰野さん。
大掃除は新入職員教育の一環にも位置づけられています。総看護部長の柴田愛さんは、「医療生協の組合組織がどういうものか、いちばん感じられる機会だから」と語ります。普段は分業で掃除はお任せでも、「きれいに使う意識づけになる。先輩たちも各職場から、午前勤務の人が残ったりして参加してくれる。職員、利用者が同じ目線で施設を維持する意義は大きい。ありがたいです」。
ずっと身近な病院
始まりは定かでないものの、大掃除は新築移転前の旧病院時代から20数年以上続く「伝統」と、みなさん口をそろえます。
企画・運営するのは、生協事業所利用推進委員会。利用者と職員の間に立ち、快適な事業所利用をはかるのが役割です。各種委員会のなかで唯一、職員が委員会に入らず、職員に有利な誘導をしないよう担保されているといいます。
委員長の越野美智代さんは、大掃除は「歴代の先輩から引き継いでやっているだけ」と謙遜します。コロナ禍での中断から昨年2年ぶりに再開。「ソーシャルディスタンスのシールをはがすのが大変だったけれど、スッキリ掃除できて良かった」と越野さん。
近所に住む組合員の外山幸子さんからは、「協立総合病院はずっと身近な存在。コロナ禍でも変わらなかった」との声も。前委員長の杉山敏子さんに長く続く秘訣(ひけつ)を聞くと、「病院を思う優しい気持ちかな。コロナが終わったら『すぐやろう』となった。私も早くから大掃除の日は予定を空ける。年1回だからね」と笑います。
みなと医療生協専務の亀川徹さんは、あらためてコロナ禍をささえてくれた組合員に感謝し、力強く「組合員さんとのつながりは、私たちの財産」だと語りました。
(民医連新聞 第1811号 2024年8月5日号)