相談室日誌 連載565 独居の患者に寄り添う支援 自宅で過ごせる生活環境に(大分)
80代男性のAさんは、独居で生活保護を利用中。肉親は県外の妹のみですが、絶縁状態です。2019年に肺炎、肋骨(ろっこつ)骨折で入院。リハビリ後、身の回りのことは自身で可能となり、見守りがあれば歩行器で歩けるようになりました。自宅退院を強く希望するAさんの自宅を確認すると、古新聞やカップラーメンの空き容器などの生ごみで埋め尽くされ、生活できる状態ではありません。退院に向けた課題に、ADLの改善だけではなく、生活環境の整備も加わりました。Aさん自身、また家族の支援による環境整備は不可能。業者へ依頼する費用の捻出も困難で、病院スタッフで行うことが決まりました。リハビリスタッフ、看護師、相談員、ボランティアを募り、Aさん宅の片づけに行きました。自宅は足の踏み場がなく、使ったままのお皿や生ごみが山積みで、大量に虫が発生し、臭気が漂っていました。退院後同じ状況にならないために介護保険を申請し、生活維持のための支援を検討しました。
その後、毎日のように当院に新聞を読みに来て、しばらくすると帰宅する生活をしていました。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大で、当院も出入りが制限されるようになり、顔を見せることはなくなりました。以後、Aさんはコロナ感染、圧迫骨折などで入退院をくり返し、自宅よりも病院で過ごす期間が長くなっていきました。一人暮らしも限界ではないかと思われましたが、Aさんは変わらず自宅退院を希望。入院生活は快適な様子で「また戻ってきました。第2のわが家」と、当院への思い入れも強くなっていたように感じます。
Aさんが安全に過ごすためにはどうしたら良いのか、Aさんとの関係を築いてきたスタッフでていねいな説明を重ね、「あなたたちにお任せします」と最終的に施設入所に同意し、退院が決まりました。Aさんの「自由にお菓子が買える施設」との希望にそった施設に入所できました。初めの入院から5年が経過していました。
独居で身寄りがなく、退院支援をする際に本人しか判断、決定することができないケースが増えています。本人の意思に寄り添いながら、本人の納得のいく形をつくりあげる支援を行っていきたいと思います。
(民医連新聞 第1811号 2024年8月5日号)
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