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民医連新聞

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診察室から 多世代を診る「虹の診察室」の可能性

 久しぶりに来院した彼を呼ぶ。私の記憶には7~8歳頃の彼の姿が頭に浮かんでいる。目線を下にして「○△君。どーぞ」。がそこにはあの可愛い目がない。その代わり2本の棒が見える。靴を履いている。あっ。視線を上げる。すると彼は言う、「先生、久しぶりです」。そういえば前回この子を診察したのは10年以上も前だったかもしれない。カルテを見ると2010年に診察記録がある。
 最近はこんな出会いが増えています。小児科医であれば当然かもしれませんが、こんな出会いが増えたのには理由があります。
 昨年から「虹の診察室」という妙な名称の診察を開始しました。当院は94床の地域包括ケアと一般急性期病床を持つ病院で、数年前から内科系は専門診療科をほぼ廃止して総合診療科に統一しました。この総合診療をさらに拡大して、年齢も問わない、全診療科・全年齢、すべての人のこころとからだを診る外来を始めてみたのです。診療所では当たり前のことですが、病院としてはちょっとした実験。いわば病院内診療所です。
 始めてみると、非常勤医師にも賛同者が多くいることがわかりました。昨年は私と後期研修医で、今年は私と非常勤の小児外科医と2人で診療しています。非常勤で来ている感染症専門医や救急専門医も参加希望があり、総合診療専門医の研修にもうってつけです。
 とはいえ課題も多くあります。すべての垣根を取り払って「虹の診察室」一本にしたいのですが、全医師ができるわけではありません。看護師をはじめ、スタッフも戸惑いが大きいようです。しかし、3~4世代(最近は4世代目のちびっこがよく来る)にわたって「家族」を診る、医師としてはこの上なく幸せな外来を手放したくはありません。それにこの外来はなんでも相談できるので、SDH(健康の社会的決定要因)へのとりくみや社会的処方にも適しています。こんな外来診療、みなさんはどう思うでしょう。みなさんの外来は、どんなふうに工夫しているでしょうか? (齋藤文洋、東京・大泉生協病院)

(民医連新聞 第1811号 2024年8月5日号)