こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (10)農民不在のロボット農業
農水省の有識者検討会は今年2月、「食料・農業・農村政策審議会」の「デジタル技術やデータを活用した生産性の高い農業経営を通じて、…農業・食関連産業のDXに向けた取り組みを進める」という答申(2023年9月)に沿って、「農業DX構想2・0~食と農のデジタルトランスフォーメーションへの道筋~」という報告書を発表しました。
これは、現在でも生産現場で導入されている、ロボットトラクター、収量センサー付きコンバイン、農業用ドローン、作業や管理を無人化する水管理システム、除草ロボットなどのデジタル技術・システムを、さらにすすめようとするものです。
その背景には、21年にアメリカのニューヨークで行われた「国連食料システムサミット」があります。「巨大デジタル企業+アグリビジネス」の食料システム支配を強化するために、(1)農家から種子、生産技術のデータを略奪し、独占する、(2)食料生産をハイテク化して農民を追い出し、土地を収奪するなどの方向性が議論されました。
東京大学の鈴木宣弘教授は「農家は追い出され、ドローンやセンサーで管理・制御されたデジタル農業で、種子から消費までの儲けを最大化するビジネスモデルが構築され、それに巨大投資家が投資する姿は絵空事ではなく、現実味を帯びてきている」と同サミットを批判しました。
「農業DX構想」では、未来予想図として、「都市部に住み、仕事をしている者の多くが、デジタルツインにより自らの端末上で、遠く離れた中山間地等のほ場(じょう)(著者注・田や畑などの農地のこと)を再現し、営農を行っている。現場のほ場では、営農に関する指示を受けた農作業ロボット等が作業を行い、その様子は、リアルタイムでデジタルツインのほ場で確認できる」という農業の姿を描いています。
私たちは、農作業の負担軽減、担い手不足解消のために、ロボットやドローンの活用、データの利用などを一律に否定するものではありません。しかし、新規就農対策や担い手支援に背を向けたまま、同構想を推進することは、“重労働を緩和し、誰でも農業ができる技術を普及することにより、農業のすそ野をひろげ、農村に人を呼び込めるようにしたい”という、私たちの願いとはまったく異なる方向です。
かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。
(民医連新聞 第1811号 2024年8月5日号)
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