相談室日誌 連載564 社会から孤立していた家族 支援の輪でささえた事例(徳島)
70代前半のAさんは、元々自宅で長男と2人暮らし。一昨年、秋頃から歩行困難、昨年秋頃から体動困難となり、自宅で便まみれになっていたのを友人らの介入で、市内の基幹病院へ救急搬送。直腸がん子宮浸潤と診断され予防的にステント留置。搬送時低栄養や貧血もあり、輸血後、急性期加療を終えて、直腸がんターミナルの継続加療目的で、当院に転入院しました。
転院後、疼痛(とうつう)や下血の症状なく経過。HDS‐R=7点と認知機能の低下や、時々易怒性も見られ、予防対策をするものの、再々の転倒や病棟スタッフへの介護抵抗や内服拒薬がありました。その後、ステントから人工肛門造設手術となりましたが、自己管理は不可能であり看護師で管理、身体面も変わらず全介助状態でした。
キーパーソンの長男は、就職の意思はありますが、吃音(きつおん)や知的障害があり、長年無職でAさんの年金で生活し、入院費を滞納。相談ができる兄弟や親戚もおらず、社会から孤立している状態でした。また、携帯電話の所持もなく、必要時に急ぎ連絡が取れないことや、病状に対しての理解も浅く、在宅介護は困難で、長男への支援も必要と判断しました。民生委員や地域包括支援センターと連携を開始し、自宅への定期的な訪問を依頼。病棟スタッフと相談し、早朝から夜間に病院から自宅へ電話かけを行うことで長男と面談を行い、経済的支援のため生活保護利用申請を提案しました。担当SWが生活保護課へ情報提供を事前に行い段取りをした後、長男に市役所へ申請手続きに行ってもらい、世帯での保護受給へとつなげました。民生委員や生活保護課CWと密に連携し、来院時には、看護師から声かけを行い、信頼関係を深めて、長男からも自分の思いや、入院に必要な物などを自ら尋ねるなど、良好な関係を築くことができました。
入院をきっかけに、今まで患者家族が社会と孤立していた生活状況を早期に把握し、サポートすることで、地域や公的機関へつないでいく大切さを実感しました。
今後も、SWとして常に幅ひろいアンテナを持って、家族も含め、安心して治療・療養ができる環境を整えるよう日々寄り添い、サポートしていきたいと思います。
(民医連新聞 第1810号 2024年7月15日号)