連載 いまそこにあるケア 第6回 アセスメントだけでは解決できない課題 文:武石卓也
2024年6月5日に国会で可決・成立した子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律に、国や地方公共団体などによる支援の対象としてヤングケアラーが明記されることになりました。
ヤングケアラー支援の現場では、アセスメントシートを活用しながらヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援につなごうという流れがあります。具体的には、「遅刻や早退が多い」といった項目をチェックしながら、子どもの状況を把握していく方法です。確かに、アセスメントは支援に欠かせないツールですが、場合によっては、「誰がヤングケアラーなのか」という線引きにつながることで、限定的な支援になる危険性があります。
こうした線引きの出発点として、「ケアとお手伝いは何が違うのか」という議論があります。この問いに対する答えとしては、子どもが担っている役割の責任の重さや時間・頻度の違いといった点などがあげられ、ケアは子どもの発達を度外視し、子どもに過重な負担をかけることが問題視されてきました。
しかし、「お手伝い」と「ケア」を切り分けて整理することは、それぞれを対極のものとして捉え、支援対象を狭めてしまう危険性があり、「お手伝いの範囲を超えているからヤングケアラーとして支援する」という見方につながりかねません。ヤングケアラーは、「どのようなケアを担っているか」という行為だけで捉えられるものではありません。ケアは突然発生する可能性があるだけではなく、ケアの状況も常に変化することを考えれば、お手伝いがケアへと発展する可能性は十分にあり得るのです。
支援をしていく上で重要なことは、なぜ家族内で子どもがケア責任を引き受け続ける状況が発生しているのかを考えることです。ここでは、「家族のことは家族で解決すべきである」といった家族のケア責任規範など、社会規範の存在に目を向けることも大切です。
「誰がヤングケアラーなのか」ではなく、「何がヤングケアラーやその家族を制約しているのか」という視点からケアの問題を捉え、「アセスメントによってケアラーを発見する」ことだけでは解決できない課題が多く存在していることを、支援者は自覚しておく必要があるのではないでしょうか。
たけいしたくや:立命館大学人間科学研究所補助研究員/社会福祉士/子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト発起人
(民医連新聞 第1808号 2024年6月17日号)
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