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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 民医連綱領実践の視点で訪問看護事業の質向上へ 地域事業所との連携を通じた研修、 事例検討のとりくみ 大阪・耳原訪問看護ST

 超高齢社会の進行、病床数削減、コロナ禍の影響などで、近年訪問看護ステーション数が増加しています。そこで、大阪・耳原訪問看護ステーションでは、質の向上のとりくみが必要と、研修・相談・動画作成などを行いました。第16回学術・運動交流集会で宮川光代さん(看護師)が報告しました。

 当事業所がある大阪府堺市の人口は81万人、高齢化率28・3%、訪問看護ステーション数は208カ所です。毎年20カ所程度の新設があり、ほぼ同数休止しています。また、新設や世代交代で、経験の少ない管理者が増えています。そこで、地域の課題に則した研修を企画し、民医連以外の事業所にも呼びかけ、地域の身近な訪問看護ステーションとして、質の向上や相談窓口の役割を果たすために活動してきました。

■顔が見える関係に

 訪問看護ステーションの管理者は、看護の質・経営・法令順守など、求められる役割が多岐にわたります。しかし、相談できる人が少なくて悩みを抱えていることが多いことや、コロナ禍で事業運営にも困難をきたし、管理者の精神的負担が増大していることから、「気が楽になる事業所運営についての学習会」を実施しました。自分のメンタル不調に気づくこと、スタッフの「いつもと違う」に気づくことの大切さを学習しました。コロナ禍のためWEB開催でしたが、グループワークで参加者それぞれの思いが表出され、活発に交流できました。
 リハビリ職員(以下、リハ職)を配置している訪問看護事業所は多いのですが、近隣の事業者間の交流機会は少ないです。また、診療報酬が減算されており、互いの業務を理解して協働し、医療度が高い人や重症者のQOLを高める支援ができるように、役割を高めていくことが必要です。そこで事例発表と、看護師とリハ職の交流・学びの場を企画しました。事例では、利用者の「デイサービスに行きたい」という希望をリハ職と看護師で共有、環境設定を含めた支援の実際が報告されました。
 意見交換は、顔の見える関係性を構築する機会となりました。他のステーションのミーティングのやり方を参考にしたいという感想も寄せられました。

■日ごろのとりくみ共有

 コロナ禍での面会制限の影響もあり、終末期を在宅で過ごす人が増えました。家族の症状受け入れが不十分かつ医療度が高い利用者も多く、看護師とケアマネジャー(以下、ケアマネ)の連携と協働が必要と考え、事例を通して学ぶ研修を開催しました。がん終末期の場合、医療保険対応となるため連携が十分でなかったことを再認識しました。看護師、ケアマネが協働することにより、より良いサービス提供ができることをあらためて学び、意識的に連携することを話し合うことができました。
 近隣の事業所との事例検討の機会は多くありません。日ごろのとりくみを共有し、意見交換するための事例検討会を開催しました。がん終末期の「生きる」をささえる事例や、看護小規模多機能型居宅介護でのコロナ対応のとりくみ、新人看護師による利用者のQOLを高めるとりくみなどの報告がありました。どの事例もチームで目標を共有してとりくまれていました。質疑応答も活発に行われました。
 2022年はコロナ陽性で自宅療養する利用者が増え、介護職の感染症対応が急務となりました。看護師・ヘルパー・ケアマネを対象に座学とPPE(個人防護具)装着の実践の学習会を行いました。研修後、陽性利用者宅への訪問を行うようになったとの報告がありました。
 終末期を在宅で過ごす人の増加があり、症状緩和の必要性が高まっています。訪問看護師が、麻薬の使用方法やPCA(自己調節鎮痛法)ポンプの使用方法について、理解しておくことが必要なため、「PCAポンプを安全に導入するため」という内容の動画を作成して、YouTubeで公開し、667回の視聴がありました。
 また電話やFAXで相談を受け付け、回答しました。40件の相談で、新任管理者からの実務相談や、コロナ陽性対応の保険請求の相談などがありました。病院・地域包括・ケアマネからも相談があり、連携の輪がひろがりました。

■どの企画も高評価

 これまでの研修参加者は、看護師113人、療法士は19人、ケアマネ27人、ヘルパー6人でした。
 どの企画も高評価でした。訪問看護の歴史が長い当事業所は、自らも研さんを積みながら、地域の訪問看護事業の質の向上に寄与する役割があると考えます。そのことで民医連綱領にある、「地域・職場の人びとと共に、医療機関、福祉施設などとの連携を強め、安心して住み続けられるまちづくりをすすめます」につながると思います。

(民医連新聞 第1805号 2024年5月6日号)