診察室から 歯科患者になれない人が増えている
全日本民医連歯科部は『歯科酷書―第4弾―』まで発行しています。読んだ人も多いと思いますが、経済的影響を受けやすい歯科医療では、医科以上に受診抑制や治療中断が増えています。
私は、徳島健康生協の歯科事業所の1つ、健生歯科なるとで勤務しています。当院でも、第1弾から『歯科酷書』に該当するような患者をフォローしてきましたが、コロナ後、状況が大きく変化していることを実感しています。具体的には、対象患者が、まったくと言っていいぐらい受診できなくなっています。
記憶にある最後の患者は、「コロナで派遣切りにあって失業したので、また就職できたら通院する」と言って中断、3年以上経過した現在も受診していません。分割で治療費を払いながら、何とか処置をすすめていた患者は、冠を装着する料金を聞いて中断し、その後来院していません。「気になる患者」として訪問なども検討したのですが、コロナの感染状況から実行に移せず、現在に至っています。
勤労者の実質賃金が連続して前年度より下がり、年金も額面は増えたものの、実質的には減少している状況で、今後の物価高騰の影響も考えると、ますます患者になれない人の増加が予想されます。
加えて、歯科医療の特徴として、75歳以上になると、急激に受診率が低下します。当院の患者層も65歳以上が過半数を超え、公共交通機関での移動が非常に不便な立地のため、免許返納や病気で受診できなくなる人も顕著に増加しています。歯科往診や送迎などで対応していますが、人員体制の問題でそのとりくみも限られたものになります。パート職員が退職して、送迎できなくなったと伝えると、「ではもう行けない」とそのまま中断になっている人もいます。
いずれにせよ、行政へ働きかけを強める必要がありますが、しばらくは患者減に頭を悩ませる日々が続きそうです。(児嶋誠一、徳島・健生歯科なると)
(民医連新聞 第1803号 2024年4月1日号)