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民医連新聞

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ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第20回 永住許可の取り消し制度は許さない 文:大川 昭博

 「日本人」と「外国人」のちがいは何ですか? そう聞かれたら、あなたは何と答えますか。言葉の違い? 文化、信仰の違い?生活習慣の違い? 肌の色の違い?
 正解は「法的地位の違い」です。日本人は、何があっても日本から退去を命じられることはありません。しかし、外国人にその保証はありません。入管法が認めているのは、一定の要件を満たした上で付与する在留「資格」です。国の政策変更で資格を奪われ、退去を命じられることもあるのです。
 そのことを理解するために、いまの永住許可について見てみましょう。
 現行制度では、永住許可後に許可時の要件を満たさなくなったことを理由に資格を取り消す制度はありません。現行法上も永住者は、比較的「安全圏」に位置している、はずでした。
 しかし法務省は、2019年に「基本的法制度に関する世論調査」を実施し、(1)永住者数は多いか、(2)永住許可に必要な要件、(3)永住許可を取り消す制度の賛否、について、極めて恣意(しい)的、誘導的な質問と選択肢を設定して、永住許可取り消しの世論形成をねらってきました。2022年、2023年の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」においても、「永住許可後に永住者としての要件を満たさなくなったと思われる事案に対処できる仕組みを構築する必要がある」としました。
 そして、納税などの公的義務を怠った場合に永住許可を取り消すことができる、とした法案を国会に提出する方針を政府が固めたことを、2024年1月30日の信濃毎日新聞が報じています。
 現在国内には、約88万人の永住者がいます。なかには、すでに高齢期に差しかかっている人もいれば、生活保護を受けている人もいます。生活困窮を理由に外国人を排除する社会はまっとうなものとは言えません。多文化共生社会をめざすのであれば、法的地位の安定をはかり、未来への希望が持てる社会にすること、それが政府の責務でもあると考えます。


 おおかわ あきひろ 移住者と連帯する全国ネットワーク理事。『外国人の医療・福祉・社会保障ハンドブック』(2019年、支援者との共著)

(民医連新聞 第1800号 2024年2月19日号)