相談室日誌 連載555 抜け出せない貧困の連鎖 患者の自己決定ささえる(岐阜)
糖尿病の疑いがあるがお金がなく受診できていない50代女性Aさんの相談が、B市の困窮者窓口から当院に。困窮者窓口とAさんは夫の相談からかかわりがあり、治療や就労が安定するまで生活保護を利用してはどうかと提案していました。Aさん、50代の夫、20代の長女、小学校低学年の孫2人の5人暮らしで、現在、誰も就労していません。収入源は長女の児童扶養手当、孫2人の児童手当、長女の友人からの借金などでした。
そうした状況から無料低額診療事業を利用し、初診時の検査結果から入院治療を勧めましたが、長女の反対があり、外来に通院することになりました。車の運転はAさんしかできず、長女はそこに頼っている様子でした。夫の世話や、孫の送迎などの家庭状況を理由に、診療や入院予約日に来院しなかったことも何度かありました。
そうしている間に、夫はグループホームに入居し、生活保護を利用して生活することになりました。
一方、Aさんは心不全の発症、増悪での入院を契機に、身体障害者手帳3級、福祉医療費受給者証を取得しました。また、長女もAさんが入院することで、孫の面倒を一人で見るという経験ができました。
Aさんは、心不全に伴う入院で、次第に車の運転も難しくなって車を手放しましたが、生活保護申請は希望しないままでした。長女との関係性が悪くなると話していましたが、生活保護を利用して生活を安定させ、治療に専念したい思いもありました。自分の治療を優先したいことを家族に伝え、心不全に伴う4回目の入院中に生活保護申請を行い、治療のためにC病院へ転院しました。
これまで切り詰めた生活を家族と営んできたAさんの新たな社会資源として、当院やC病院が加わることになりました。病院のソーシャルワーカーとして、今後の治療や生活にどのように向き合っていくのかを整理していくよう介入しました。
Aさんの自己決定をささえる上で、これまでの過程をないがしろにしてはいけないと思います。時間のかかる共同作業ですが、同じ方向を向いてかかわっていきます。
(民医連新聞 第1799号 2024年2月5日号)