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民医連新聞

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誰もがかかりやすい病院へ 日本語学校留学生と外来ラウンド 「1職場1アウトリーチ」の実践 奈良・健生会医局

 奈良・健生会医局は、2023年度の職場目標のひとつに「外国人へのアウトリーチ」を掲げています。昨年11月17日、土庫(どんご)病院(奈良県大和高田市)に近隣の日本語学校の留学生らを招き、外国人がかかりやすい病院だろうか?と、外来ラウンドを行いました。(丸山いぶき記者)

■議論を深めアウトリーチ

 「今から病院のなかを見て回ります。わからないところを教えてください」。11月17日、院長の吉川周作さん(医師)のかけ声で外来ラウンドは始まりました。
 スリランカ、ネパール、ミャンマー、中国、ベトナムからの留学生5人と、日本語学校教員2人を招待。金曜の午後2時半から約2時間かけ、外国人患者が風邪症状で受診した想定で院内をめぐりました。医師8人が、業務の合間に入れ替わり立ち替わり、留学生らの意見に耳を傾けました。吉川さんと事務局次長の水井崇徳さん、2年目研修医の西松篤則さん、総合診療専攻医の塩尻裕哉さんが、率先して案内。各職場を巻き込み、事務や看護師、放射線技師など多職種20人以上の職員と、実習中の医学生1人も加わりました。
 企画したのは50人の医師集団、健生会医局です。近年は、2人1組で担当を決めて全日本民医連の総会運動方針の学習会を継続し、議論を深めて多岐にわたる年度目標を定め、実践しています。増え始めた外国人患者の実態を知ろうと、「外国人へのアウトリーチ」を目標に加えた23年度は、8月29日と9月5日に近隣の日本語学校2校を訪問。懇談で出た課題を、より具体的に知るためにと、ラウンド実施にこぎ着けました。

■入り口からさっそく

 土庫病院を受診する外来患者はまず、中央受付で健康保険証を提示し、受診したい診療科を告げて各科受付へ案内されます。窓口上部の大きな案内板には「中央受付Central Reception」と英語表記もあります。
 しかし、入り口に立った留学生からはさっそく「どこへ行けばいいかわからない」との声が。右側面の中央受付は目につきにくく、1新患、2再来、3予約の窓口の意味もわからないからでした。
 各受付では、言葉の壁が浮き彫りになりました。多国籍の留学生の共通言語は、英語ではなく、やさしい日本語。教員からは、熟語を避け、です・ます調で、主語・述語をはっきりさせ、ゆっくり話すと伝わりやすいと教わりました。在留カードの確認や、各種記入式用紙を学校と共有して事前サポートする提案もありました。
 採尿や血圧・体重測定、採血では、日本の医療の当たり前が通用しません。次に向かう場所がわかりにくく「床に色分けした線を引いて誘導しては?」と教員。随所で出る意見に「当院のウイークポイントが見えるね」と吉川さん。
 レントゲン室では「大きく息を吸ってー」の声かけよりも、実演が効果的。CTの機器は多言語対応でしたが、東南アジア言語はカバーしていないと判明しました。
 診察室では、検査結果や薬の飲み方を、どう理解してもらうかが課題に。理解度をはかるには、復唱を求めると良いと学びました。「医師は診察室でじっくり1対1で対応できるけど、大勢の患者に対応する事務や看護師の方が、たいへんそうだと感じた」と西松さん。

■継続を約束

 ラウンド後は留学生らと懇談。「英語表記もほしい」「簡単な日本語で話してほしい」のほか、日本語初学者からは、わからないことばかりで、「1人ではむずかしい」と、率直な感想も出ました。
 塩尻さんは「診療所で外国人患者を診ることもあり、勉強になった」と話しました。日本語学校が行う留学生の健康診断の受け入れや、新入生向け「受診の仕方」出張授業も、検討していくことを確認。吉川さんは「たくさん宿題をもらった。良くなったか、また見に来て」と呼びかけました。
 企画終了後、「こういう医療にたどり着くまでの視点って大事」と西松さん。その言葉に大きくうなずいた吉川さんは「今回みつかった課題や改善案は、来週の医局会議で共有する。まずは第一歩。続けていきたい」と話しました。

(民医連新聞 第1797号 2024年1月1日)