ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第17回 すべての外国籍住民が利用できる健康保険、通訳制度を 文:プラー ポンキワラシン
みなさんにとっての外国人ってどういう存在ですか? 最近、観光目的で日本を訪れる外国人観光客がたくさんいます。2023年10月の観光客の数が251万人にのぼり、コロナ前の2019年同月を上回りました。みなさんも外国人をみかけたり、接する機会があったりするかと思います。
一方、日本では生活者として322万人の外国籍住民が暮らしています。100人いれば、2人が外国籍住民です。その他に、日本で生活しているにもかかわらず、何らかの事情で滞在に必要な在留資格がない、あるいは難民として滞在許可を申請していても、なかなか許可が降りない状態の外国籍住民もいます。
短期で日本を訪れる「外国人観光客」や、富裕層で日本での治療を希望し「メディカルツーリズム」として来日する外国人と、生活者として社会の一員である外国籍住民とは区別する必要があります。
90日を超えて日本に滞在する外国籍住民は健康保険に加入する義務があります。しかし、正式な在留資格がなかったり、在留資格によって健康保険に加入できない人たちがいます。中には国に帰りたくても帰れない人もいます。難民申請中の人は働くことも許されず生活費を稼ぐこともできません。裕福に暮らしていない人がほとんどです。その人たちが日本で生活していて病気になることがあります。しかし健康保険に加入できないため、メディカルツーリズム目的で来日する富裕層の外国人と同じ診療報酬1点20円や30円を請求されても(※許容する厚労省方針あり)、どうしようもないのが現状です。とてもおかしい、不公平な仕組みになっています。
また、病院での通訳制度の整備が必要です。日本では感染症法の対策のなかに結核対策があります。自治体によっては結核患者への聞き取りや治療場面に公費負担で通訳を介することがあり、治療中断率が改善されています。他の疾患の治療にも、患者が無理なく利用できる通訳制度などがあれば、保険医療制度や治療方法を正確に説明することで、治療がよりスムーズに行われます。本人の健康のみならず、健全な社会を維持できるようになります。
プラー ポンキワラシン 大阪市を拠点に活動するNPO法人CHARM事務局/移住者と連帯する全国ネットワーク理事。タイ・バンコク生まれ。
(民医連新聞 第1796号 2023年12月4日・18日合併号)
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