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民医連新聞

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診察室から 人生短し、芸術多し

 40年前、病院の忘年会の余興でにわかバンドを組み、ギターとドラムを始めました。ギターは大学時代から少し弾いていたものの、ドラムはゼロからの独習。市長選挙中だったので「負けないで」を演奏しました。
 味を占めてその後もいくつかの楽器に挑戦しては、診療所の祭りでも演奏。ちまたにはプロ並みの卓抜な趣味を持つ医師も多いなか、私の場合は「楽しみごと」の域で満足しています。津軽三味線、電子サックスや三線も独習なので、プロに聴かれると笑われますが、患者からは拍手をもらえて、診察室トークの話題にできます。今はピアノとギターの弾き語りの練習も楽しい。水彩画も好きで、海外旅行のたびに描いて保険医協会の展示会に出してもらっています。
 「才能がないなら取得すればいい、はじめは皆素人だ」というニーチェの言葉もあります。それなりのゴールを決めて始めれば、小さな感動が味わえるもの。好奇心こそが原動力です。運動の方は、定年後に始めた卓球を、肩痛をおして週一で続けていますが、73歳ともなると「貯筋」ができません。畑を借りて妻と野菜づくりもしていて、良い筋労働になっています。医業以外の知的好奇心も私の認知症対策。語学マニアで、仏独伊語の検定3級をとってみました。物理や数学、歴史の受験参考書を再履修して、孫の勉強の一助に。イスラムや中東の歴史学習は、ガザやユダの理解にもつながります。人生短し、芸術多し。
 定年後の男性が趣味を持てず、妻の用事にひっついてくるのを「濡れ落ち葉」といいます。そうならないために、でもなかったけれど、少しずつ重ねて、気づけば楽しみごとが増えていました。無趣味の人は「この歳で今さら」ではなく、まずは始めてみてはいかがでしょうか。日頃の医療正義、生きがいある社会づくりの道行きのお供となるかもです。最近は、大阪民医連の尊敬する先輩Drが、患家でオカリナを演奏していると知り、早速買い求めました。またひとつ楽しみごとが増えそうです。(金崎照雄、富山協立病院)

(民医連新聞 第1796号 2023年12月4日・18日合併号)