現場の声こそ大きな力 2024年度 診療報酬・介護報酬改定に抗する
2024年度医療・介護・障害福祉の報酬トリプル改定を見据え、全日本民医連は診療報酬・介護報酬プロジェクトを立ち上げました。報酬改定への要望を厚労省に提出し、制度の変遷から矛盾点を解く、「診療報酬・介護報酬制度への提言」も作成中。これらをまとめた各担当者に重点を聞きました。(丸山いぶき記者)
総論 民医連が先頭に立って
副会長 上原昌義さん(医師)
私たち医療・介護事業所は、診療報酬・介護報酬の枠内で事業を行うため、勝手に値上げすることができません。新型コロナウイルス感染症の渦中で、物価や水光熱費の高騰も相まって、全国の民医連事業所は存続が困難なほど経営状況が深刻です。コロナ禍以前から強要されてきた社会保障費の抑制政策、診療報酬・介護報酬のマイナス改定が続き、コロナ禍で壊滅的に危機が露見し、多くの医療・介護団体も、これまで以上に強く改善要請しています。一方、国は軍事大国化をねらい、財源を社会保障費の削減で賄う算段です。
いま地域で困っている患者・利用者の声を、もっとも現場に近い私たちが届けなければいけない、そんな並々ならぬ思いで、要望と提言をまとめました。
社会保障も立派な経済の一翼を担っています。医科・歯科・調剤・介護、多職種でたたかう民医連は、他の医療団体からも評価されています。地域で共同をひろげ、奮闘していきましょう。
医科 患者との分断の克服を
事務次長 内田寛さん
コロナ禍での最大の教訓は、医療・介護には日常から余力がないといけないということ。外来の初・再診料、病院の入院基本料の引き上げや、入院時食事療養費の引き上げも喫緊の課題です。職員の不団結を生む看護師処遇改善評価料は廃止して、すべての医療従事者の処遇を底上げすべきです。
診療報酬制度は、公正で質の高い医療を追求する医療機関が、必要なコストを賄えるものでなければなりません。しかし、高い一部負担金が「診療報酬が上がれば、一部負担金も上がる」と患者との間に分断を持ち込み、医療機関の正当な報酬引き上げ要求を難しくさせていると考えます。医療を必要とする人が、必要な時に給付を受けられる保険制度にしていくことが求められます。
歯科 医療と認めないのか!?
理事 榊原啓太さん(歯科医師)
歯科部は報酬改定の行程を見据え、保険でより良い歯科医療を求める署名運動を前倒し。医科・介護現場でも署名がひろがりました。学校検診で指摘された歯科矯正に保険適用を求める請願は21年、国会で全会一致で採択され、前進を勝ち取っています。
歯科の活躍の場と役割が鮮明になる一方、金パラの逆ザヤ問題や歯科衛生士・技工士の低い報酬体系、技工士問題は日本の歯科医療が立ち行かなくなる危機です。
口腔(こうくう)の健康は全身に影響するのに、保険がきかない治療があることは、歯科を医療と認めないに等しく、怒りを覚えます。人権として保険医療と認めるべきです。提言では、なぜ歯科混合診療が当たり前とされてきたのか、歴史にも言及。連携する多職種を知る良い学習材料にもなるはずです。
調剤 あめ玉より安い薬
理事 金田早苗さん(薬剤師)
薬剤委員会では、調剤報酬改定のたびに厚労省と懇談しており、今年も8月に実施しました。
いま一番の話題、医薬品の供給問題の根っこには、社会保障費や医療費の抑制政策があります。後発医薬品を推進する一方、低すぎる薬価が不採算品の製造中止、手順不正を招いています。一番安い薬で1錠5・7円。あめ玉より安い事実は厚労省も認めます。他方、新薬メーカーは優遇し、新薬は高額という二極化が起き、シワ寄せは国民におよんでいます。
薬価が下がる一方、技術料は上がらず、薬局経営は苦しくなっています。地域包括ケアシステムで保険薬局や薬剤師の役割は拡大。民医連は従来からの活動が認められてきていますが、それを適正に評価する調剤報酬が必要です。
介護 報酬制度の悪用を許すな
事務局次長 松田貴弘さん
介護保険ができて23年、年々利用しづらくなっています。政府は介護サービス給付費(介護報酬)が上がると保険料も上がるからと、報酬制度を悪用。基本報酬を下げて加算の種類を異常なほどに増やし、政策誘導しています。
21年改定で通所の入浴加算が2種類に増え、従来の入浴の単位が下がり、家の風呂に入れるようにする訓練つきの入浴の単位が上がったことも、自立を強制する政策誘導です。低すぎる介護職員の処遇改善は切なる願いですが、加算では利用者負担が伴い、事業所と職員を悩ませています。
2024年度報酬改定でも医療・介護は一体で攻撃の的になります。今回の要望・提言を今後どうひろげていくかが重要です。
※「要望」は全日本民医連ホームページに掲載。
(民医連新聞 第1796号 2023年12月4日・18日合併号)