ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第16回 外国籍住民にもやさしい社会でありますように 文:プラー ポンキワラシン
日本にはたくさんの外国人が生活しています。日本で生活し、日本で働き、学校に通う人がいます。日本政府は外国人材の受け入れを積極的に行っているため、2023年6月末時点で322万人が「外国籍住民」として日本で暮らしています。私も外国籍住民の一人です。
当然、健康に暮らすことが何よりも幸せなことですが、望まなくても病気になることが、誰にでもあります。病気になっても安心して治療が受けられるように、日本では皆保険制度があります。この健康保険には、90日を超えて日本に滞在する外国籍住民も加入しなければなりません。
これは世界からみても、とてもめずらしい健康保険制度です。日本以外の国では、公的な健康保険がなく任意で加入する国や、簡単な手続きを済ませるだけで治療を無料で受けられる国もあります。
国によって制度が異なっていますが、日本語が十分に理解できないため、日本の制度を正しく理解できず、健康保険の手続きをしない外国籍住民もいます。一方、雇用主が保険加入の手続きを怠っても、気がつかないままでいる場合もあります。
病気になって心身ともに弱っている時、国籍に関係なく不安になります。まして病院に行っても、言葉が通じないことは本当に不安しかありません。どの科を受診すればいいのか、どうして最初から大きな病院に行けないのかわかりません。また読めない問診票への記入を求められたり、手続きもたくさんあります。初めて日本の病院に行く外国籍住民にとって、わからないことばかりです。そのせいで、病院に行くことをためらったり、諦めたりします。そして、受診できても治療方針、内容を正しく理解できず、治療を中断してしまうこともあります。初期段階から診療を受けることができなくて病状が進行してしまい、結果的に緊急性のある治療が必要となります。それに伴い、医療費が高騰してしまうことになります。
労働力として期待されている外国籍住民が、安心して日本社会のなかで暮らせるかどうかが、少子高齢社会の日本社会・経済にとって重要な課題の一つだと思います。
プラー ポンキワラシン 大阪市を拠点に活動するNPO法人CHARM事務局/移住者と連帯する全国ネットワーク理事。タイ・バンコク生まれ。
(民医連新聞 第1795号 2023年11月20日)
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