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民医連新聞

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実践!! 地域とともにたたかう経営 福岡民医連

 コロナ禍を経て、多くの医療機関がかつてない経営危機にあります。全日本民医連では、他団体や地域の事業所と手を携え、国や自治体に制度改善を求める「たたかう経営」のとりくみを呼びかけています。福岡民医連での実践を取材しました。(稲原真一記者)

危機的な経営状況

 今年5月、新型コロナウイルスの5類化で、国や自治体の各種補助制度が大幅に縮小。物価や水光熱費の高騰、患者動向の変化なども重なり、医療機関の経営状況は急速に悪化しました。日本病院会など3団体が行った調査でも、回答した病院の7割が赤字(図1)。民医連のモニター法人(経営動向の指標になる法人)でも厳しい状況にあります(図2)。
 全日本民医連経営部は、こうした現状について日本病院会や国立大学病院長会議などの病院団体とも懇談。診療報酬の引き上げや制度改善なしに、経営課題の克服はできないと訴え、地域の病院とも協力してたたかうことを加盟事業所に呼びかけています。

地域の課題を共有

 たたかいの一つが、日本病院会が提起する「入院基本料の引き上げに関する嘆願書」への賛同を全国の病院にひろげることです。
 福岡民医連ではこの呼びかけに応えて、県内の約450病院すべてに「嘆願書」への賛同を呼びかけるとりくみを始めました。まず県連が案内の文書を各病院へ送付。その後、各法人が周辺地域を担当し、それぞれの病院への対応を分担することを決めました。
 法人の一つ健和会は、北九州地域の94病院を担当し、管理部で電話かけなどを分担。つながりのある12病院には訪問を申し込みました。懇談した地域の病院とは「嘆願書」への賛同の訴えのほか、先の見えない経営状況や人手不足、不十分な補助制度などへの意見交換も行いました。訪問先の事務部長からは「いつも地域で声をあげリードしてもらって助かっている」との言葉もありました。訪問した同法人の大手町病院事務長の谷口路代さんは「共通の課題や問題意識が見え、もっと日常的な交流が必要だと実感。コロナ前に行われていた交流活動を再開し連携を強めたい」と言います。

カギは迅速な意思統一

 運動の起点になったのは、コロナ対応で始まった県連事務局長と主要3法人の専務で行う定例会議。毎週水曜日にWEBで行われ、議題がなければ短時間で終わります。「嘆願書」のとりくみもこの会議で議論し、方針を決定しました。会議では行政調査への対応や、5類化で感染対策をどうするか、対県交渉で何を要望するか、病院懇談での反応など、多様な内容を議論しています。
 各専務からは「会議での議論から、地域の声を県や国へ届けて制度改善につなげられた」「他法人の対応を知ることで、視野がひろがった」と肯定的な意見が。県連事務局長の洗川和也さんは「毎日変化する状況に、現場に近い議論でスピード感のある対応ができた。県連への結集も強まり、運動を実効性のある形ですすめられている」と強調します。

地域を守るたたかい

 「過去に病院経営が順調だった時代はほぼなく、制度の構造的問題」と指摘するのは、全日本民医連経営部部長の塩塚啓史さん。入院基本料の引き上げは、規模や地域にかかわらずすべての病院の経営改善につながります。全国に病院は約8400あり、現在約3200病院が「嘆願書」に賛同していますが、「これが6割、7割になれば政治が動く」と塩塚さん。
 一方で、地域に不足しているものを捉え、外部の医療機関や事業所とも連携した質と量を備えたネットワークの再構築や、リポジショニングの必要性も訴えます。「医療や介護は、住民のいのちや生活をささえる社会的共通資本。経営を守ることは地域を守ることという視点で、全国でも地域とともにとりくんでほしい」と呼びかけます。

(民医連新聞 第1793号 2023年10月16日)