相談室日誌 連載550 その人らしい生活をささえ 地域連携で自宅に戻った事例(愛媛)
60代女性のAさんには視覚障害があります。同じく視覚障害を持ち、糖尿病や認知症、難聴などがある60代の夫と二人で生活していました。二人とも幼少時からの障害で、身体障害者手帳を持ち、障害年金を受給しています。以前は自宅で鍼灸(しんきゅう)院を営み、視覚障害者の自助団体で役割を担っていました。夫の糖尿病発病後、ガイドヘルパーと介護保険のヘルパーを利用しながらAさんが夫を介護してきました。Aさんに親族はおらず、数年に一回、車で数時間かかるところに住んでいる夫の兄弟が訪ねてきていました。しかし年齢を重ね、運転に不安もあるため、徐々に足が遠のいていきました。
そんななか、Aさんが動けなくなり入院に。一人では他人とかかわりを持つことが難しかった夫も、いっしょに入院となりました。Aさんはベッド上での生活になり、意識もうろうとして手足は動かず、中心静脈栄養で栄養を摂取する状態に。これまで夫婦のさまざまな決定はAさんが夫に説明しながらしてきた経過があり、夫の生活、相談にも問題が出てきました。関係事業所だけでなく地域包括支援センターにも相談。将来は成年後見人制度の利用も視野に入れて相談を開始していました。しかし、その間に夫が死亡。Aさん自身の生活をどうしていくか考える必要が出てきました。全身状態が改善しリハビリを実施するなかで、Aさんは住み慣れた自宅で生活したいとの気持ちをもつように。状態も徐々に回復し、自力で車いすに移乗し、口から食事をとれるようになっていきました。
介護保険事業所、ガイドヘルパー、地域包括支援センターとともに、どうしたら地域で生活していけるかを相談。数回カンファレンスや自宅訪問などを重ねて準備を整え、自宅への退院が可能になりました。自宅訪問の際は近所の人が声をかけてくれたり様子をのぞいたりなど、地域に溶け込んで生活していることもわかりました。現在は通所や訪問のサービスを中心に利用し、一人で生活しています。いつでも相談できる窓口として、本人と関係者とで情報を共有しています。
その人らしく生活するための役割を担い、ささえていきたいです。
(民医連新聞 第1793号 2023年10月16日)
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